ドイツ銀行は21日、傘下ブランド「ポストバンク」の元株主の一部と和解合意が成立
したと発表した。これに伴い引当金を部分的に取り崩す意向だ。
ドイツ銀は2008年9月、ドイツポストの上場子会社だったポストバンクの株式をポス
トバンクから一部取得することで合意した。同株29.75%を1株当たり現金57.25ユー
ロ、計約28億ユーロで取得することになっていた。
だが、直後に起きた米投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破たんを機に世界的な金
融危機が発生し、ドイツ銀の業績が悪化し取引の成立が危ぶまれたことから、09年第
1四半期に取得条件の変更で合意。ドイツ銀はポストバンク株22.9%を1株当たり
23.92ユーロで取得した。
同行はその後、先物取引を通してポストバンクの過半数株を実質的に確保したが、実
際の出資比率は29.88%に抑制していた。30%に達すると有価証券取得・買収法
(WpUEG)の規定により、株式公開買い付け(TOB)の実施義務が発生するためだ。
ドイツ銀はポストバンク株が大きく下落した10年10月の時点でようやくTOBを実施し
た。買い取り価格は法律で定められた最低価格(過去3カ月間の加重平均株価)の25
ユーロだった。
原告のポストバンク元株主は、ドイツ銀はTOB以前の時点で30%以上のポストバンク
株を事実上、獲得していたにもかかわらずWpUEG法上のTOB義務を怠ったと主張。TOB
を実際よりも早い時点(10年10月以前)に実施していれば、買い取り価格は25ユーロ
を上回っていたとして、差額支払いを求める訴訟を起こした。
同訴訟でケルン高等裁判所が買い取り価格の上乗せを命じる見通しを4月に明らかに
したことから、ドイツ銀は24年第2四半期に引当金13億ユーロを計上した。
今回の和解ではTOBで支払った25ユーロに31ユーロを上乗せすることを取り決めた。
和解に応じたのは80人・社超の原告で、裁判での請求総額全体の約60%を占める。
今回の合意を受け、同行は第3四半期に引当金の一部を取り崩す。その効果で税引き
前利益が約4億3,000万ユーロ押し上げられる見通しだ。和解提案を受け入れる原告が
今後、増えれば、取り崩し額はさらに増えるとしている。