ハンガリーの企業連合がスペイン鉄道車両大手のタルゴを買収する計画に、スペイ
ン政府が拒否権を発動した。企業連合の一部にハンガリー政府が出資しており、ロ
シアとの潜在的なつながりを危惧したものとみられる。親ロシア的なオルバン首相
率いる同国に対する他の欧州連合(EU)諸国の不信感があらわになった形だ。
スペイン日刊紙『エル・パイス』が28日に報じたところによると、同国経済省は売
却額が6億1,900万ユーロに上る同取引を、国家安全保障と公共秩序に「取り返しの
付かないリスク」をもたらすとみている。タルゴは高速鉄道が異なる軌間の線路に
自動的に適応する軌間可変車両システムを開発しており、その技術がウクライナの
内外でロシア軍の移動や輸送に使われる可能性があるという。
ハンガリーの同企業連合ガンツ・マヴァグ・ヨーロッパ(Ganz Mavag Europa)に
は、国営ファンドのコルヴィナス(Corvinus Zrt)が45%を、鉄道車両最大手マ
ジャールヴァゴン(Magyar Vagon)がガンツ・マヴァグ・ホールディングを通じて
55%を出資している。ガンツ・マヴァグ・ホールディングは露鉄道車両最大手トラ
ンスマシュの子会社で、ロシア輸出入銀行と関係が深い。
マジャールヴァゴンのアンドラーシュ・トンボル取締役は、2022年2月のウクライ
ナ軍事侵攻を機にロシアとの関係は断たれたと主張しているが、スペインの情報機
関は同社とロシアとの関係途絶は見せかけに過ぎないとしている。
タルゴは今月初め、チェコ同業のシュコダグループとの合併を断り、ガンツ・マ
ヴァグへの身売りを進める構えを見せていた。ガンツ・マヴァグ・ヨーロッパはス
ペイン政府による拒否権発動を受け、同国と欧州の両方で法的措置を取る意向を示
している。