トルコ与党・公正発展党(AKP)のオメル・チェリック広報担当者は3日、中国、ロ
シア、インドなど新興国で作る枠組みBRICSへの加盟に向けた「プロセスが進行し
ている」事実を明らかにした。「正式に加盟の意向を伝えた」としたブルームバー
グ通信の2日付報道内容を認めた形だ。ただ、具体的な手続きを進めているわけで
はないという。BRICSは米国主導の世界秩序に対抗して多極的な世界秩序を形成す
る目的で結成されたもので、北大西洋条約機構(NATO)加盟国かつ欧州連合(EU)
加盟候補国であるトルコが参加すれば、その政治的な意味合いは大きい。一方で、
経済面ではBRICS加盟国側の利は薄く、トルコの加盟が成るかどうかは明らかでな
い。
トルコはEU加盟交渉が一向に前進しないなか、以前からEUに代わる枠組みを模索し
てきた。レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は2018年のBRICS首脳会議に
ゲストとして参加し、BRICS加盟への関心を明らかにした。今年7月には中国とロシ
アが主導する上海協力機構(SCO)首脳会議に出席し、SCOへの正式加盟を目指す立
場を明確にした。
エルドアン大統領はNATOとBRICSの双方に加盟することに問題はないという考え
だ。米『ニューズウィーク』誌の7月のインタビューで大統領は「トルコは加盟す
るすべての枠組みで信頼できるパートナーとしてその立場を守り、強化する」「そ
のため、NATO加盟国であるトルコがSCO、BRICS、EU、チュルク諸国機構(OTS)に
加盟する国々と協働しても問題はない。かえって世界平和に貢献できる」と話して
いる。
ロシアはトルコの加盟の意向を歓迎している。ウラジーミル・プーチン大統領は今
年6月、トルコのハーカン・フィダン外相の訪ロに際し、加盟を支援する姿勢を明
らかにした。
トルコのBRICS加盟の利点について専門家は、自国に対する西側諸国の政治的・経
済的影響力を弱めるとともに、西側の金融システムに代わる新しいシステムや国際
ルールを見出せる可能性があると指摘する。経済面でも、加盟国間の投資や、開発
プロジェクトの実施を通じて投資・貿易の拡大が見込める。先端技術の導入やノウ
ハウ獲得で、中国、インドなど加盟国の支援も期待できる。
一方、BRICS諸国が経済不振のトルコを新加盟国として歓迎するかどうかは微妙
だ。特に現在は世界景気の低迷が問題となっており、加盟の見通しは必ずしも明る
くない。