トヨタ自動車と独BMWは5日、燃料電池車(FCV)の普及に向け協力関係を強化するこ
とで基本合意したと発表した。燃料電池システムの開発とインフラ整備を共同で進め
る。開発・調達の協力による相乗効果の創出や、パワートレイン・ユニットの統合に
よるコスト削減、商用・乗用車向けの需要拡大などにも取り組む。BMWのオリ
ファー・チプセ社長は「これは自動車の歴史における画期的な出来事であり、(…)
多くの人々が燃料電池車を求める時代の幕開けとなる」と強調した。
両社は2011年、環境技術における中長期的な協力関係の構築で合意し、燃料電池など
の開発で協働してきた。今回の合意では第3世代燃料電池システムを共同開発するこ
とを取り決めた。両社のモデルに搭載することで、顧客の選択肢の幅を拡大する。
第1弾として、BMWは28年に同社初の量産型FCVを発売する。既存モデルで内燃機関車
(ICE)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(BEV)に加えFCVも提供し
ていく考えだ。量産の規模は明らかにしていないものの、同社のFCV事業を統括する
ミヒャエル・ラート氏は、3ケタ台では量産とは言えないと述べた。少なくとも4ケタ
台を想定しているもようだ。
FCVは現在、需要がほとんどない。水素補給スタンドの構築コストが充電スタンドに
比べ大幅に高く、緊密な補給網が存在しないためだ。ドイツの今年上半期の新車登録
台数は34台にとどまった。
両社はこの問題を解決するため、水素を製造・供給する事業者とも協調し、インフラ
の整備や水素の安定供給、低コスト化に取り組んでいく。ラート氏は30年までに水素
スタンドを主要幹線道路に200キロ間隔で設置するとした欧州連合(EU)の法定目標
を指摘。欧州ではFCVがどこでも走行できる環境が28年には構築されるとの見方を示
した。同様の計画は日本、韓国、中国にもある。
BMWはフォルクスワーゲン(VW)やメルセデスなど欧州の競合がゼロエミッション車
をBEVに絞り込むなか、「テクノロジー・オープンネス」の立場を堅持。燃料電池な
ど蓄電池以外の動力も重視してきた。これが「マルチパスウェイ」戦略に基づき水素
を重視するトヨタとの長期協業につながっているもようだ。