野村総合研究所(NRI)は16日、欧州自動車業界のデータスペース「カテナX」の
認定を取得したと発表した。日本企業が同認定を受けるのは初めて。独自開発した
EDCコネクター(データスペースに接続しデータ交換を行うソフトウエア)が、カ
テナX参加組織間で適切なデータ連携を行うソフトとして、仕様に沿って正しく実
装されていることが認定取得につながった。カテナXのマネージング・ディレク
ターであるアンジャ・ミセルベック氏は「NRIという日本のパートナーが加わった
ことは、我々のデータスペースが国際的な連携においても意義を持ち、業界を超え
て適用可能であることを示しています。私たちは共に、真にグローバルな標準を形
成し続け、世界の自動車業界のデジタル変革を推進していきます」と述べ、歓迎の
意を示した。
欧州のデータスペースの多くは、データ所有者が自身のデータを制御し、管理する
権利を持つという「データ主権」の考え方を前提としていることから、データ送信
はその取り扱いに関する要求事項を提供側が指定し、利用者側(消費者側)がそれ
を遵守するが条件となる。データのこうした連携管理は、ユーセージ・コントロー
ル(データ利用制御)と呼ばれる機能を用いて厳格に行われる。NRI製のEDCコネク
ターにも、このデータ利用制御機能が組み込まれており、欧州におけるデータ主権
の設計思想を正確に実装していると評価された。
カテナXは自動車産業に関係する欧州の法規制、特に欧州電池規則への対応を目指
している。同電池規則は電動車に搭載される電池の、製造から再利用・廃棄に至る
ライフサイクル全体を管理し、電池の安全性や持続可能性などを確保しようとする
もので、今後は搭載される電池に対してバッテリーパスポートを発行することが求
められる。カテナXはデータ連携基盤の仕組みにより、企業機密を競合他社に対し
ては開示したくない電池メーカーと、その情報を必要とするリサイクル事業者の
ニーズをともに満たすことができる。
NRIは今後段階的に施行される欧州電池規則への対応に向けた検証や顧客支援を通
じて、自動車産業における炭素中立と循環経済の実現に貢献していく。また、日本
でも始まった産業データ連携の仕組みづくりに貢献し、政府が提唱する未来社会の
コンセプト「ソサエティ5.0」の実現に取り組んでいく。