ドイツのオーラフ・ショルツ首相(社会民主党=SPD)は6日夜の臨時記者会見でクリ
スティアン・リントナー財務相(自由民主党=FDP党首)を解任すると発表した。経
済・安全保障上の危機に対応するため財政拡大を求めるSPDと連立与党・緑の党の要
求を頑なに拒否したことから、「離縁」に踏み切った格好だ。これを受けFDPは下
野。ショルツ内閣は少数派政権に転落した。1月15日に開催される年明け最初の連邦
議会で信任投票を行う意向を示している。信任は否決される公算が高く、3月末まで
に総選挙が行われる見通しだ。
与党3党はこれまで、2025年度予算をめぐって激しく争ってきた。単年度財政赤字の
対名目国内総生産(GDP)比率を景気の影響を除いた構造ベースで0.35%以内にとど
めることを義務付けた基本法(憲法)の「債務ブレーキ」ルールの順守を、小さな政
府を信奉するFDPが強く要求。これに対しSPDと緑の党は、構造危機に陥った経済の再
建やウクライナ危機への対応には同ルールの適用除外が必要だとしており、議論は平
行線をたどっていた。事態の打開に向けSPDと緑の党の側から妥協案が出されたもの
の、リントナー氏が受け入れ拒んだことから、ショルツ氏は解任という異例の手段を
取った。米国の大統領選挙でトランプ前大統領の返り咲きが確定し、経済・安全保障
上のリスクの高まりが予想されることは今回の決断に影響した可能性がある。
ショルツ内閣にはリントナー氏を含めFDPから4人の閣僚が参加していた。このうちの
3人(リントナー氏、ブッシュマン法相、シュタルクヴァッツィンガー教育・研究
相)はFDPの政権離脱を受けて離任した。ヴィッシング交通相はFDPを離党し政権にと
どまった。
政権を去った3人の後任はすでに任命された。新財務相にはショルツ氏の相談役であ
るイェルク・クーキース氏(SPD)が就任。法相はヴィッシング氏、教育・研究相は
オズデミル農相(緑の党)がそれぞれ兼任する。
独・欧州を取り巻く環境は厳しいことから、有識者の間からは連邦議会(下院)の即
時解散と安定政権の速やかな樹立を求める声が出ている。それにもかかわらずショル
ツ氏が1月中旬まで解散を延ばすのは、納税者負担の軽減や企業支援などの重要法案
を年内に成立させたいという思惑があるためだ。法案可決に向け最大野党のキリスト
教民主・社会同盟(CDU/CSU)に協力を要請するとしている。ただ、CDU/CSUは即時
解散を要求しており、協力を得られるかどうかは定かでない。