ドイツのハノーファー統合生産研究所(IPH)は産業界と共同で、エンジンに使用する鋼鉄製ピストン向けの新たな鍛造技術の開発に取り組んでいる。上からだけでなく、横からも圧力を加えることにより、鍛造後にピストンに穴を開けるための切削加工を不要にすることを目指している。同技術が実用化できれば、ピストン製造に使用する材料を最大10%削減できるほか、穴を開ける手間を省けるため、生産に必要なエネルギーやコストを抑えることができる。
従来の鍛造技術では、上から圧力をかけて成形した後にピストンをコネクティングロッド(連接棒)に連結するためのリストピンを通す穴を切削加工する必要があった。IPHのプロジェクトでは、上からだけでなく、横からも加圧することにより、目的の形に鍛造できる技術の開発を目指している。
IPHではすでに多方向から加圧する技術を試験した実績があり、同技術を鋼鉄製ピストンにも応用していく計画という。また、同技術はヒンジやサスペンションアームなどにも活用できると見込んでいる。
同プロジェクトには、鉄鋼メーカーやピストンメーカーなど産業界から9社が参加している。実施期間は2016年2月まで。連邦経済エネルギー省の助成政策である産業共同研究開発プログラム(IGF)の一環に位置付けられる。
■ アルミ製から鋼鉄製ピストンに移行も
IPHのエンジニアは、軽量なアルミニウムを使用したピストンが今後は鋼鉄製ピストンに移行していくと予想している。アルミニウムは軽量なため燃費改善に寄与する利点があるが、さらに燃費を向上させるため、小型のターボエンジンが増える傾向が強まっていることが背景にある。ターボエンジンでは点火時にピストンにかかる負荷が高まるため、アルミよりも耐久性に優れる鋼鉄製ピストンの需要が高まると見込んでいる。