欧州連合(EU)は6月19日、ルクセンブルクで外相理事会を開き、域内に向けたサイバー攻撃に対し、EUとして効果的に対処するための共通の枠組みを構築することで合意した。サイバー空間での脅威が急速に拡大するなか、EUや加盟国に向けて悪質な攻撃を仕掛けた国や企業、個人に対し、EU共通外交・安全保障政策の枠組みで制裁を発動できるようにする。
インターネットが経済基盤として不可欠な存在となる一方で、サイバー攻撃の脅威が年々増している。昨年の米大統領選挙では、ロシアの情報機関とのつながりが疑われているハッカー集団が、同国に批判的なクリントン候補を妨害する目的で民主党全国委員会にサイバー攻撃を仕掛けたとされる。欧州でも先のフランス大統領選挙で、ロシアへの制裁継続を主張するマクロン陣営が同集団の標的となり、9月に行われるドイツ連邦選挙への介入も懸念されている。
短時間で広範囲に被害が及ぶサイバー攻撃に1カ国で対応することは極めて困難であることから、外相理は加盟国が連携して迅速に対処するための共通ルールが必要との認識で一致。悪質なサイバー攻撃を受けた場合、必要に応じて資産凍結や域内への渡航禁止などの制裁を発動できるようにすることで合意した。
外相理は声明で、EUは「国家あるいは非国家組織が悪質なサイバー攻撃を通じて目的を果たそうとするケースが増えていることに懸念を抱いている」と強調。「攻撃の範囲、規模、持続期間、複雑さ、洗練度、影響の大きさ」に応じ、EUが一体となって対処すると表明した。