ドイツ政府は12日、欧州連合(EU)域外の投資家が戦略的産業分野の国内企業を買収する際の監視を強化することを閣議決定した。欧州で中国企業による買収が相次いでいることを受けた措置で、当局による買収案件の審査期間を長くするほか、審査対象の範囲も拡大するという内容。経済エネルギー省は戦略的分野での外資規制を唱えるフランスやイタリアと連携し、EUレベルで域外企業の投資に対する監視を強化するための法整備を急ぐよう、欧州委員会に働きかける方針を示している。
今回の閣議決定は議会承認を必要としないため、直ちに新規制が導入される。それによると、重要な戦略的分野での域外企業による買収案件は、審査期間が従来の2カ月から4カ月に延長される。防衛産業で「重要な技術」の開発や製造に携わる企業や、電力供給網、原子力発電所、上水道、通信網、病院、空港など、戦略的部門にサービスやソフトウエアを提供する企業が新たに審査の対象となる。さらに買収目的で設立された特別目的会社など、「間接的」な買収案件も審査対象に加わる。
ドイツでは産業用ロボット大手クーカが昨年、中国家電大手の美的集団に買収されたのを機に、中国企業など外資による買収への懸念が一気に広がった。こうした動きを背景に、独当局は中国投資ファンドの福建芯片投資基金が独半導体製造装置メーカーのアイクストロンを買収する計画を一度は承認しながら、約1カ月後に承認を取り消し、異例の再審査に踏み切った経緯がある。さらに、米電気自動車メーカーのテスラが独自動車部品メーカーのグローマン・エンジニアリングを買収するなど、中国以外の企業による買収も相次いでおり、国内で外資による買収案件に対する監視強化を求める声が高まっていた。