欧州連合(EU)の欧州委員会は8日、EU域内で販売される乗用車(新車)を対象とした二酸化炭素(CO2)排出量の規制値に関する新しい草案を発表した。同草案では、新車登録された乗用車のCO2排出量の平均値を2021年比で2025年には15%削減、2030年には30%削減することを各メーカーに求めている。欧州自動車工業会(ACEA)は同日、同規制値に異論を唱える声明を発表した。
■ エミッションフリー車の目標値も提案
欧州委はCO2削減値に加え、電気自動車などのエミッションフリー車の割合を2025年に15%、2030年に30%とする目標値も提案した。ただ、同目標値に拘束力はなく、達成できなくても罰則の対象とはならない。その一方、同目標値を達成した場合は、ボーナスポイントをメーカーに付与するシステムを導入する。
例えば、2030年のCO2排出量の平均値を100グラム以下に抑えなければならないメーカーが、同年のエミッションフリー車の割合で35%を達成した場合、CO2排出量の上限値を105グラムに引き上げることができる。
なお、エミッションフリー車には、CO2排出量が50グラム以下の車両も含まれるが、純粋なエミッションフリー車に比べボーナスポイントが低くなる。
EUは現行規制では、2021年までに新車の走行1キロメートル当たりのCO2排出量を平均95グラム以下に抑えることを各メーカーに義務づけている。これに対し、2030年の規制草案では、走行1キロメートル当たりのCO2排出量の具体的な数値を設けなかった。欧州委はこれについて、95グラムの規制値は実際に路上を走る際の排ガス量に基づいた数値ではないため意味がない、と説明している。
新規制が正式決定するためには、欧州議会とEU閣僚理事会で検討され、承認を得なければならない。
■ 欧州自工会は反論、2030年に20%削減を提案
欧州自動車工業会(ACEA)は同日、欧州委の規制草案に異論を唱える声明を発表した。2025年に15%削減する規制値は、自動車メーカーが技術的に対応するための十分な時間がない、と指摘。2030年に30%削減する数値は「過度な要求」であり、20%に引き下げるよう要求した。20%であれば、巨額ではあるが許容範囲のコストで達成が可能との見解を示している。
一方、環境団体などからは、欧州の環境団体トランスポート&エンバイロメント(T&E)が「自動車業界への早いクリスマスプレゼントだ」と批判するなど、さらに厳しい規制値や電気自動車の割合の義務化を求める声が上がっている。