鉄鋼・アルミ輸入制限で米をWTO提訴、20日にも報復関税発動へ

欧州連合(EU)は1日、米国が発動した鉄鋼・アルミニウムの輸入制限は国際貿易ルールに違反するとして、世界貿易機関(WTO)に提訴した。また、輸入制限への対抗措置として、総額64億ユーロ相当の米国産品に報復関税を課す手続きも本格化させた。EUは今月20日にも、このうち28億ユーロ規模の報復関税を発動する方針だ。

米トランプ政権は輸入品の増加で国内の鉄鋼・アルミ産業が弱体化すれば米国の安全保障が脅かされると主張し、鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ25%、10%の関税を発動した。EUに対しては通商交渉で圧力かけるため、カナダなどと同様、5月末までの期限付きで輸入制限の適用を猶予していたが、一連の交渉で譲歩を引き出せないと判断し、1日付で適用除外の措置を打ち切った。

欧州委のユンケル委員長は「鉄鋼・アルミニウムの輸入制限は単なる保護主義だ」と米国の対応を厳しく批判した。マルムストローム委員(通商担当)も「(輸入制限は)明らかにWTOルールに違反している。EUは多国間の貿易システムを守る決意だ。すべての国が国際ルールに従って行動することを求める」と強調。WTOでの紛争処理手続きに入ったことを明らかにした。

EUは米国による輸入制限の発動に備え、5月中旬に報復関税の対象品目リストをWTOに提出している。20日にも発動する報復関税の対象品目には鉄鋼品のほか、ハーレー・ダビッドソンのオートバイ、リーバイ・ストラウスのジーンズ、バーボンウイスキーなどが含まれている。EUはWTOが米国の輸入制限をルール違反と認定した場合、さらに36億ユーロ相当の報復関税を課す方針で、すでに第2弾の品目リストも策定している。

トランプ大統領は米国が抱える多額の貿易赤字を問題視し、適用除外を認める見返りとしてEUに通商協議での譲歩を迫っていた。一方、EU側は米国が重視する自動車分野で協議に応じる姿勢を示して揺さぶりをかけ、適用除外を恒久的な措置とするよう求めていた。輸入制限の猶予期限が迫る中、米欧は通商担当相による協議を通じて打開策を模索したが、米側は除外措置の延長を求めるEUの要求を拒否。輸入制限の発動を回避することはできなかった。

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