欧州委員会のマルムストローム委員(通商担当)は6月26日の記者会見で、米国による鉄鋼・アルミニウムの輸入制限への対抗措置として、7月中旬にも鉄鋼製品に対する緊急輸入制限(セーフガード)を暫定的に発動する可能性があると述べた。輸入制限で米市場から締め出された鉄鋼製品が大量に欧州連合(EU)市場に流入し、域内の企業に損害を与える事態を防ぐための措置。ただ、具体的な内容は「検討中」としている。
EUは米国への対抗措置として、報復関税を発動すると共に、世界貿易機関(WTO)での紛争処理手続きに着手したが、欧州委は3月末から鉄鋼製品に対するセーフガード調査を進めている。マルムストローム氏は「調査は年末まで続く見通しだ。欧州委はセーフガードの暫定的な発動について真剣に検討している。発動の時期は7月中旬になるだろう」と述べた。
同氏はさらに、EUが報復関税を発動したことで、米二輪大手のハーレー・ダビッドソンが欧州向けの生産を国外に移転する方針を表明したことに言及。トランプ政権の通商政策が米産業界に「重大な結果をもたらしている」と指摘した。
一方、EUのトゥスク大統領は27日、翌日からのEU首脳会議に向けて各国首脳に宛てた書簡で、トランプ政権とEUの関係悪化が深刻化している現状に触れ、「最悪のシナリオに備える必要がある」と警告した。地球温暖化防止のための「パリ協定」やイラン核合意からの米国の離脱などを念頭に、「米国第一主義」を掲げるトランプ政権の政策により、欧米関係は「大きな圧力を受けている」と指摘。米国による鉄鋼輸入制限に端を発する通商紛争にとどまらず、さまざまな分野で欧米間に亀裂が生じているとの懸念を示した。