欧州連合(EU)と英国は7月26日に離脱交渉を行い、目下の最大の焦点となっている北アイルランドとEU加盟国アイルランドの国境問題について協議したが、合意に至らなかった。双方は10月までの離脱交渉完了を目指し、8月中旬に再協議を行う。
EUと英国は昨年12月、北アイルランドとアイルランドの国境問題について、英国がEUを離脱してからも人やモノの流れを制限しないようにするため、厳しい国境管理を避けることで合意。EU側は具体策として、国境問題の現実的な解決策が見つからない場合は、北アイルランドをEUが設ける「共通規制地域」に組み込み、EUの関税同盟に事実上とどめるという案を提示している。
これに対して英国側は、北アイルランドと英本土の間に事実上の国境が引かれるとして反発。英国が2019年3月末にEU離脱した直後に双方の関係が激変し、貿易などに大きな影響が及ぶのを避けるため設定される「移行期間」が終了する2020年12月末までに国境問題を解決できない場合は、英国が暫定措置として21年12月末まで関税同盟にとどまることを提案した。EU案と比べて、北アイルランドだけでなく英国全体が関税同盟にとどまり、しかも期限が設けられる点が異なる。
EUのバルニエ首席交渉官と英国のEU離脱担当相は26日に同問題について協議した。しかし、EU側は英国の提案について、英国全体が期限付きで関税同盟にとどまる点などについて、現実的ではなく疑問だと指摘。英国経由でEU加盟国に輸出されるモノに対して、英国がEUの関税徴収を代行するという案に関しても、バルニエ首席交渉官は「EUが関税政策の適用を非加盟国に委任することはできない」と述べ、応じない意向を表明した。