独自動車部品大手のボッシュは4月29日、移動(モビリティ)用の燃料電池の量産に事業参入すると発表した。スウェーデンの燃料電池開発会社パワーセルと、固体高分子形(PEM)燃料電池をベースにしたスタックの開発・生産で協力する。遅くとも2022年にはスタックを市場投入する予定。ボッシュは、2030年までに世界の電気自動車の最大20%が燃料電池車になると予想している。
パワーセルは、スウェーデンのボルボ・グループからのスピンオフ企業で2008年に設立された。本社は同国のイェーテボリに置く。従業員数は現在60人。出力125キロワットまでのスタックを生産しており、生産の自動化を進めている。同社は現在すでに、トラックや乗用車向けにプロトタイプ用の燃料電池セルを供給している。
独日刊紙『フランクフルターアルゲマイネ』によると、ボッシュはパワーセルにライセンス料として差し当たり5,000万ユーロを支払った。量産化した後は、生産規模に応じてライセンス料を支払うもよう。また、生産開始から最初の7年間は、共同開発したスタックをボッシュが独占的に販売する権利を得たと報じている。
ボッシュの広報担当者は、独業界紙『オートモビルボッヘ』の取材に対して燃料電池の生産拠点について量産化前のスタックはドイツで生産するものの、将来的な生産拠点は未定であるとコメントしている。
■ 商用車市場に商機、価格低減で乗用車にも普及か
ボッシュは自動車用燃料電池では、商用車市場に商機があると見込んでいる。トラックを対象とした欧州連合(EU)の排ガス規制が強化される中で、トラックの電動化は不可欠とみられているためだ。従来の電気駆動用の車載電池は、トラックに搭載するには大型になりすぎ、重量も重くなるため、燃料電池に需要があると予想している。商用車向けの燃料電池の量産化が進み、価格が下がれば、乗用車でも燃料電池車の普及が進むと見込んでいる。
また、燃料電池車の普及に向けては、燃料電池システムの総コストの最大3分の2を占めるスタックの低価格化や、燃料である水素の値下げが必要となる。
■ SOFCでは英セレス・パワーと協力
ボッシュは、PEM燃料電池セルのほかに、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の開発にも取り組んでおり、SOFCの開発では、昨年半ばから英エンジニアリング会社のセレス・パワーと協力している。SOFC技術は例えば、工場や計算センターの分散型電源などに使用することができる。
ボッシュは将来、出力10キロワットのSOFCモジュールを生産する計画。このモジュールは、エネルギー需要の大きさに合わせて連結することができる。