EUと英のFTA交渉が依然難航、公平な競争環境・漁業権で溝埋まらず

欧州連合(EU)と1月末にEUを離脱した英国の自由貿易協定(FTA)など将来の関係の構築に向けた交渉が7月21日に再開されたが、主要問題で溝が埋まらず、進展がないまま3日間の日程を終えた。今後も交渉を続けるが、合意のメドは立っていない。

EU側は関税ゼロでの貿易を継続するには、公平な競争環境の確保が不可欠として、英国がEUの競争法や公的補助、環境、労働者の権利などに関するルールに従うことを要求しているが、英国は拒否している。EUの共通漁業政策から離脱する英国が、自国水域でのEU漁船の操業権を制限する方針を示していることも対立点となっている。

双方は「移行期間」が終了する12月末までの合意を目指して3月から交渉を行っているが、両問題が障害となり、協議は平行線をたどっている。6月最終週から新型コロナウイルスの影響でテレビ会議方式で行われていた交渉を対面方式に戻し、集中的に協議しているものの、これまでのところ成果はない。

今回の集中協議でも、公平な競争環境と漁業権をめぐる対立が続き、進展はなかった。EUのバルニエ主席交渉官は23日の協議終了後の記者会見で、両問題で英国がEUの要求を拒否し続けるなら「合意はあり得ない」とコメント。英国のフロスト首席交渉官は9月中の合意が可能としながらも、双方の主張に大きな隔たりがあることを認めた。

移行期間は延長しないことが決まったことから、交渉は年内妥結の必要がある。EU側は合意した協定を欧州議会と加盟国が批准するのに時間がかかるため、10月を交渉期限としている。

予定されている集中協議は7月27日の週が最後だが、8月17日の週に再開されることになっている。10月15~16日に開かれるEU首脳会議までの合意を目指すが、双方とも競争環境と漁業権の問題で譲歩する気配はない。バルニエ主席交渉官は漁業権に関して、今回の協議で英国側が「ほぼすべてのEU漁船の締め出し」を主張したことを明らかにし、「断じて受け入れられない」と述べた。交渉期限が迫る中、合意がないまま新たな関係に突入し、関税復活など双方の企業にとって厳しい状況に至る懸念が強まっている。

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