ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の毒殺未遂疑惑を巡り、ドイツがロシアに対する圧力を強めている。マース外相は6日、ロシア側が適切な対応を取らない場合、独ロ間を結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の計画見直しもあり得ると警告。ザイベルト独政府報道官も7日、同様の見解を示した。政府はこれまで暗殺未遂事件とパイプライン計画を切り離して考える立場だったが、国内で計画の見直しを求める声が高まっているため、制裁をちらつかせてロシアへの圧力を強めていく構えだ。
プーチン大統領の最大の政敵とされるナワリヌイ氏は先月19日、移動中の飛行機内で体調不良を訴え、病院に救急搬送された。意識不明の重体となった同氏はドイツに移送され、現在はベルリンの病院で治療を受けている。独政府はナワリヌイ氏について今月2日、神経剤「ノビチョク」系の毒物による毒殺が図られた「明確な証拠」があると断定。ロシア政府に説明を求めている。
マース外相は6日付の独大衆紙ビルト(日曜版)とのインタビューで、ロシア政府が数日以内に真相解明に向けて動かない場合、関係国と対応を協議する必要が生じると警告。さらに建設が進められているノルドストリーム2について、「ロシアによってわれわれが態度の変更を強いられることがないことを強く願う」と述べ、ロシア側の対応によっては計画の停止もあり得るとの考えを示した。メルケル政権の閣僚がナワリヌイ氏の事件とパイプライン計画を明確に結びつけたのは初めて。
また、ザイベルト報道官も7日の記者会見で、メルケル首相は「計画停止の選択肢を除外するのは誤りだと考えている」と述べ、ロシア側の対応次第で計画を見直す方針を支持した。そのうえで、パイプライン計画には多くの国の企業が関与しているため、ロシア側の反応を見極めたうえで関係国と協議する必要があると指摘。現時点で結論を出すのは「時期尚早だ」と述べた。