ブリヂストンがフランス北部の工場を閉鎖する意向を表明したことを巡り、仏政府は12日、同社が工場を維持する代替案を拒否したと明らかにした。工場は予定通り閉鎖される見通し。政府は従業員の雇用確保や工場の譲渡先探しに取り組む意向を示し、ブリヂストンに協力を求めている。
ブリヂストンは9月、2021年以降に北部ベチューンの工場を閉鎖する方針を発表した。欧州の乗用車用タイヤ市場で内径が18インチ未満の低インチタイヤの需要が減り、同タイヤを主力とするベチューン工場の操業継続が難しくなったと判断したため。仏政府は地元経済が深刻な打撃を受けるとして閉鎖に強く反対し、10月に1億ユーロ(約120億円)以上の設備投資を行い、約860人の従業員を460~560人程度に削減して生産性を最大40%向上させ、閉鎖を回避するという案を提示。
ブリヂストンの欧州法人は12日に声明を発表し、「慎重に検討した結果、政府の案は当社と従業員にとって現実的なシナリオでないとの結論に達した。新型コロナウイルス感染拡大による危機で欧州における生産能力はさらに過剰になっており、存続案は問題解決につながらない」と説明。工場閉鎖の方針に変更はないことを明らかにしたうえで、従業員の再就職先や工場の譲渡先を探す方針を示した。
パニエリュナシェ産業担当相はブリヂストン経営陣と従業員の代表、地元議員らが出席した会議終了後、「ブリヂストンは扉を閉ざし、この地を離れることになった。われわれは従業員に寄り添い、最善の解決策を探す」と表明。地元自治体のベルトラン議長は「従業員をティッシュのように捨てることは許されない」と述べ、ブリヂストンに工場の譲渡先などを探すよう強く訴えた。