1月末に欧州連合(EU)を離脱した英国とEUの自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉が依然として難航している。双方の首席交渉官は4日、焦点の分野で大きな溝が残っていることを明らかにした。11月中旬とされる交渉期限が迫る中、協議を継続するが、合意できるかどうかは不透明な状況だ。
FTA交渉では主要な争点となっている公平な競争環境、漁業権、紛争解決の仕組みをめぐる対立が続いており、英国側が期限としていた10月15日までに合意できなかった。10月22日に双方の首席交渉官による集中協議が再開され、一時は交渉が合意に近づいているとの観測が浮上していた。
しかし、EUのバルニエ首席交渉官は4日、EU加盟国の代表に交渉の進展状況を説明した際、2週間にわたって集中協議を行ってきたが、主要な問題で依然として大きな溝があると報告。その後のツイッターへの投稿で、英国側の合意に向けた努力が足りないとの見解を示した。EU離脱の移行期間が終了する20年12月末までに合意できず、EUと英国の貿易で関税が復活する事態にEUが備えているとして強硬な姿勢を示し、英国側に歩み寄りを促した。
一方、英国のフロスト首席交渉官も同日、ツイッターで双方に大きな隔たりがあるとした上で、協議を継続するが「英国の主権を完全に尊重する」着地点が必要として、譲歩しない構えを示した。
こうした状況を受けて、欧州委員会のフォンデアライエン委員長と英国のジョンソン首相は7日に電話協議を行い、今後も交渉を続けることで一致した。双方とも交渉に一定の進展はあるものの、公平な競争環境、漁業権をめぐって大きな隔たりがあることを確認。首席交渉官が9日からロンドンで協議を再開することを決めた。
EUと英国はFTAで合意したとしても、欧州議会と英議会の批准手続きに時間がかかるため、11月中旬をぎりぎりの最終交渉期限としているもよう。残された時間は少なく、協定がないまま移行期間が終了し、双方の通商が混乱する事態が現実味を増してきた。