英米両政府は12月16日、通関手続きの簡素化や密輸の防止などを目的に税関当局が互いに協力する「税関相互支援協定(CMAA)」に署名した。米国は欧州連合(EU)とCMAAを結んでいるが、今回の協定締結により、英国のEU離脱に伴う移行期間終了後の2021年1月以降も英米間で協力体制を維持する。
CMAAは不正薬物や銃砲類などの密輸を防止したり、知的財産侵害物品の流入を防ぐため、税関当局間で情報を共有したり、通関手続きの簡素化や調和について協力することを定めた国際的取り決め。特定の人、貨物、輸送手段などに対する監視も相互支援の枠組みに含まれているため、テロやマネーロンダリング(資金洗浄)の防止効果も期待される。
CMAA締結により、日米間でAEO(認定優良事業者)制度の相互認証に向けた協議が始まる。貨物のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備された事業者に対し、税関が認定するAEO制度を相互に承認することで、二国間でセキュリティレベルを向上させながら物流の円滑化を図ることができる。
ノーマン金融担当閣外相は、ロンドンの米国大使館で行われた調印式で「EU離脱後の継続性を確保する重要な協定であり、米英の税関当局の強固な関係性を示すものだ。情報や優れた取り締まりの手法を共有することで、不正な貿易や密輸などの撲滅に向けて引き続き協力することができる」と述べた。
一方、英政府は15日、メキシコとの貿易継続協定に署名したと発表した。これにより、英国のEU離脱に伴う移行期間終了後の21年1月1日以降も、EU・メキシコ間の自由貿易協定(FTA)の合意内容が英・メキシコ間で引き続き適用されることになる。
トラス英国際貿易相は「メキシコとの貿易継続協定により、50億ポンド規模の互恵的な貿易関係と市場アクセスが維持される」と強調。同協定を締結できなければ、英国の輸出業者は約5,900万ポンドに上る関税の負担を強いられるところだったと述べた。
英政府は12月末の移行期間終了が迫る中、貿易相手国との間でFTAや貿易継続協定の締結を急いでいる。国際貿易省によると、これまでに58カ国との交渉を終えた。