欧州連合(EU)とインドは8日、オンライン形式で首脳会議を開き、中断していた自由貿易協定(FTA)交渉を再開することで合意した。EUは影響力を増す中国を念頭に、インド太平洋地域への関与を強める姿勢を打ち出しており、アジア戦略の柱としてインドとの連携強化を図る。
EUとインドは2007年にFTA交渉を開始したが、自動車部品などの関税引き下げや知的財産の保護などで折り合えず、13年に中断した。双方は共同声明で「EUとインドは安全保障や持続可能な成長で利益を共有している」と強調。FTA交渉とは別に、ITやエネルギー、輸送インフラなど幅広い分野で協力体制を強化することで一致した。
また、EUは新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大に直面するインドへの継続的な支援を改めて表明した。人工呼吸器をはじめとする救命医療機器の提供など、EU加盟国による支援額はこれまでに1億ユーロを超えている。
EUはこれまで中国に偏っていたアジア戦略の見直しを進めており、4月にはEU共通のインド太平洋戦略を策定すると発表した。昨年までにそれぞれ個別にインド太平洋戦略をまとめているフランス、ドイツ、オランダの主導によるもので、サプライチェーン(供給網)における中国依存からの脱却とともに、民主主義や人権といったEUが重視する価値観を共有する国々との連携を強化し、経済や安全保障の面でEUとしての存在感を高める狙いがある。
欧州委員会のフォンデアライエン委員長は会議後の記者会見で、「EU・インド間における手つかずの潜在的な可能性の展望が広がった」と述べた。