蘭裁判所がシェルに異例のCO2排出削減命令、30年までに19年比45%

オランダ・ハーグの地方裁判所は5月26日、英・オランダ系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルの温室効果ガス削減に向けた取り組みが不十分だとして、同社に対して2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量を19年比で45%削減するよう命じる判決を言い渡した。企業に具体的なCO2削減目標を示した判決は異例で、エネルギー企業に対して一層の温室効果ガス削減を求める動きが広がるとの見方が出ている。

世界の石油需要がコロナ禍以前の水準に戻るのは早くて22年以降とされる中、主要エネルギー企業は化石燃料への依存度を低減し、再生可能エネルギーなど低炭素分野に軸足を移す動きを加速させている。シェルは今年2月、事業活動に関係するあらゆる温室効果ガス排出量を50年までに実質ゼロとする事業戦略を発表。石油の生産量を30年にかけて年1~2%のペースで減産し、温室効果ガス排出量を排出原単位(エネルギー1単位あたりのCO2排出量)で23年までに16年比で6%以上、30年までに20%以上、35年までに45%以上削減するとの目標を打ち出した。

裁判所はシェルの対応は不十分だとして取り組みの強化を求めた格好。判決は同社の掲げる長期目標は「さまざまな条件が付けられており、具体性に乏しく、拘束力もない」と指摘。シェル本体のほかにサプライヤーや顧客を含め、供給網全体で30年までにCO2排出量を19年比で45%削減するよう命じた。

今回の訴訟は環境保護団体グリーンピースなど7団体が19年に提起していた。原告の1つであるフレンズ・オブ・ジ・アースオランダ支部の代表は「裁判所が主要な排出主体に具体的な削減目標を課したのは今回が初めてで、画期的な判決だ」と強調。英大手法律事務所アシャーストのトム・カミンズ氏は「気候変動に関連した判決としては、間違いなくこれまでで最も影響が大きいものだ」と指摘した。

シェルの広報担当は判決について、より具体的な削減計画の取りまとめを急いでいるとの主張が認められず、「非常に残念だ」とコメントし、控訴する考えを示した。そのうえで「当社は温室効果ガス排出量を50年までに実質ゼロとする目標の達成に向け、取り組みを強化している」と強調し、再生可能エネルギーなど低炭素分野へのシフトを加速させる方針を改めて示した。

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