独自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)は28日、VWグループが主導する企業連合が仏レンタカー大手のヨーロッパカーを買収すると発表した。すでに全体の68%を保有する株主が買収提案に応じている。企業連合は、1株あたり0.50ユーロの買収価格を提示しており、これは企業価値で29億ユーロに相当する。株式の取得率が90%を超えた場合は、買収価格を1株あたり0.51ユーロに引き上げる。
企業連合には、VWグループのほか、ロンドンの資産管理会社アテスターとオランダのモビリティプロバイダーのポン・ホールディングスが参加している。
ヨーロッパカーはレンタカーやカーシェアリングサービスなどを提供している。世界140カ国以上に約3,500カ所の拠点を持ち、保有車両は35万台を超える(2019年時点)。年間の利用者数は延べ500万人以上に上る。
企業連合は、ヨーロッパカーの事業基盤を活用し、同社を新しい革新的なサービスを提供するモビリティプラットフォームへと発展させる方針を示している。買収後は、ホールディング会社の傘下にヨーロッパカーを置く組織構造とする。VWはホールディング会社に過半数を出資するものの、企業連合やヨーロッパカーを支配しないと説明している。
買収成立にはフランスの金融監督当局(AMF)やカルテル当局の認可が必要となる。これらの手続きを経て、買収手続きは2021年第4四半期または2022年の第一四半期に完了する見通し。
■ ヨーロッパカーの事業基盤を活用して新サービス提供へ
VWグループのヘルベルト・ディース社長はヨーロッパカーの買収について、「モビリティ市場は急速に変化している。顧客の間では、例えば、定額サービスやシェアリングモデルなど、自家用車に替わる新しい革新的な『オンディマンド』のモビリティソリューションを求める傾向が強まっている」と述べ、自動車の利用方法が変化している現状を説明した。また、「ヨーロッパカーは、最新の保有車両(フリート)管理のノウハウを持ち、空港や駅、市内に幅広い拠点網を持つ」と述べ、ヨーロッパカーの事業基盤の活用により、迅速にモビリティ―サービスを提供することができるとの考えを示した。