欧州連合(EU)は8月30日、新型コロナウイルス感染拡大を受けて実施している域外からの渡航制限について、観光客など不要不急の渡航者を受け入れる国・地域のリストから米国など6カ国を除外すると発表した。これらの国で新規感染者が急増していることから、水際対策を強化する必要があると判断した。
リストから除外されたのは米、イスラエル、レバノン、モンテネグロ、北マケドニア、コソボ。これによってリストの対象国は日本、豪州、カナダ、シンガポール、韓国など17カ国に減る。
EUは2020年3月、域外の第三国から域内への渡航を原則禁止する措置を決定し、不要不急の渡航を禁止してきた。感染状況が落ち着いてきたことから同年6月に同制限を段階的に緩和することを決め、受け入れても安全と判断した国・地域からの旅行者についてはワクチン接種の有無にかかわらず観光目的でも入域できるようにした。
EUは安全な国のリストを新規感染者数や検査状況などをもとに、2週間ごとに見直すことになっている。過去14日間の人口10万人当たりの新規感染者数が75人以下であることが主な認定基準だ。
米国は6月中旬に同リストに指定された。当時の過去14日間の新規感染者は10万人当たり40人を下回っていた。しかし、このところ感染力が高いデルタ株の流行で感染者が急増し、同感染者が基準を大きく上回る300人を超えたことから、除外を決めた。米国が相互主義に反して、EUからの渡航を制限していることも考慮した。
EUの渡航制限緩和には法的拘束力はなく、実際の運用は加盟国の判断に委ねられる。このため、安全な国と認定された国からの旅行者に対して、各国は到着時のPCR検査、一定期間の隔離といった条件を付けることができる。一方、EUは新型コロナウイルスワクチンの接種を終えていることを条件に、すべての国からの観光客を受け入れることを5月に決めており、安全リストから除外されている国に関してもワクチン接種を完了していれば引き続き不要不急の渡航が原則的に認められる。