欧州医薬品庁(EMA)は12月16日、米製薬大手ファイザーが開発した新型コロナウイルスの経口治療薬「パクスロビド」の緊急使用を認めると発表した。承認審査は終えていないが、欧州連合(EU)域内で感染の再拡大が続いていることから、重症化リスクが高い成人への投与を認める判断を下した。実際に使用を認めるかどうかはEU加盟国がそれぞれ判断する。
パクスロビドは、ファイザーの新たな抗ウイルス薬と既存の抗HIV薬「リトナビル」を配合したもの。EMAによると、高リスク患者が重症化するのを防ぐため、発症から5日以内の酸素吸入が必要になる前の段階で投与する必要がある。肝臓や腎臓の機能が著しく低下している患者には使用できず、妊婦にも推奨しない。
EMAがまとめた試験データの中間解析結果によると、症状が出始めてから5日以内にパクスロビドを投与した607人のうち、入院した患者は1%弱の6人にとどまり、死亡した人はゼロだった。これに対し、プラセボ(偽薬)を投与したグループでは612人のうち41人が入院し、10人が死亡した。
新型コロナの経口薬について、EMAは11月、米メルクが米リッジバック・バイオセラピューティクスと共同開発した「モルヌピラビル」の緊急使用を認めている。