英が30年までに原子炉最大8基新設へ、エネルギー安全保障の新戦略

英政府は6日、エネルギー安全保障に関する新戦略を発表した。新型コロナウイルス禍からの経済活動の再開による需要の急増や、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に伴うエネルギー価格の高騰を踏まえ、自給率を高めて安定供給を確保するのが狙い。原子炉の新規建設や最新技術の導入で原子力発電を強化するほか、再生可能エネルギーの発電能力も大幅に引き上げる。

英国では総発電量に占める原子力の比率が現在16%となっているが、稼働中の原発は老朽化で2030年までに大部分が運転を停止する予定。新戦略では30年までに原子炉を最大8基新設し、50年までに電力需要の25%を原子力で賄う目標を掲げた。次世代型の小型モジュール原子炉(SMR)の開発も進める。政府は月内に1億2,000万ポンド(約194億円)規模の基金を立ち上げるとともに専門機関を設置し、原子炉の新設計画を推進する。

再生可能エネルギー分野では、洋上風力の発電量を現在の10ギガワットから30年までに50ギガワットに引き上げるほか、太陽光発電も35年までに現在の5倍に拡大する。これにより、原発や水素エネルギーも含めた低炭素エネルギーの電源比率を95%に近づける。

英国では家庭向けの電気・ガス料金が4月に54%上昇した。ジョンソン首相は声明で「コントロールできない不安定な国際価格にさらされる電源への依存を減らし、より安い価格でエネルギー自給率を高めることができる」と強調。新戦略に沿って電源の多様化を進めることで、エネルギーの安定供給を確保し、価格高騰を抑制することができると説明した。

ただ、原子炉の建設には巨額の費用に加えて稼働までに長い時間がかかるため、野党などからは「家計を圧迫する光熱費の削減にはつながらない」といった批判が出ている。

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