欧州連合(EU)加盟国と欧州議会は7日、域内の上場企業に対し、一定以上の比率で女性を取締役に登用することを事実上義務付ける指令案で基本合意した。2026年6月末までに社外取締役など非業務執行取締役の40%以上、または取締役全体の33%以上を少数派の性別(ほとんどの場合は女性)にする必要がある。閣僚理事会と欧州議会の正式な承認を経て新指令が施行され、加盟国はその後2年以内に国内法を整備する必要がある。
EUは性別(ジェンダー)に基づく社会的・文化的な偏見や差別を排除し、雇用・賃金格差といった男女間の不平等を是正するための「ジェンダー平等戦略」を掲げ、労働市場における男女平等の実現に向けた取り組みを進めている。21年10月時点で女性取締役の比率は加盟国の平均で30.6%と、11年の10.3%から大きく改善したものの、最も高いフランス(45.3%)から最も低いキプロス(8.5%)まで、国によるばらつきが大きい。東欧諸国を中心に、取締役の男女比に関する国内法が整備されていない加盟国も多く、新指令の導入を機にEU全体でジェンダーバランスが改善されると期待されている。
指令案によると、域内の上場企業(従業員250人未満の企業を除く)は取締役の選定にあたり、男女で能力が同等の候補者がいた場合、少数派の性別の候補者を優先しなければならない。当事者が選考結果について説明を求めた場合、企業は情報を開示する必要がある。
期限の26年半ばまでに目標(非業務執行取締役の40%、または全取締役の33%)を達成できなかった企業はその理由と改善に向けた対策を報告しなければならない。加盟国は国内法で罰則規定を設け、報告を怠ったり、内容が不十分な場合は罰金や選任の取り消しなどの制裁を科す。
指令案は欧州委員会が10年前に提案したが一部の加盟国の反発で協議はいったん中断していた。女性役員の登用を推進する現EU加盟国のフランスが任期中に取り組むべき優先課題の1つと位置づけ、ドイツがこれに賛同して議論が一気に進んだ。
欧州委のフォンデアライエン委員長は声明で「企業の多様性を高めることは単に公平性の問題にとどまらない。成長と技術革新の促進にもつながる」と強調し、加盟国と欧州議会による合意を歓迎した。