欧州連合(EU)加盟国は1日に開いた産業担当相理事会で、域内で活動する大企業に対してサプライチェーン(供給網)で人権、環境問題が生じていないかどうかを監視することを義務付ける法案について合意した。欧州委員会の原案では、すべての大企業を対象としていたが、金融サービスを適用除外とする修正が加えられた。
「企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令」と称される新ルールの法案は、強制労働、児童労働といった人権問題や、環境汚染などが企業活動で生じるのを防ぐのが狙い。大企業に責任を負わせ、取引関係がある世界中のサプライヤーが違反していないか監視させるという内容だ。
欧州委が2月に発表した原案では、従業員が500人以上で、全世界での売上高が1億5,000万ユーロ以上の企業に適用することになっていた。アパレル、林業、食品・飲料、鉱業など人権、環境問題への影響が大きい業種に関しては、同250人以上、4,000万ユーロ以上であれば対象に含まれる。さらに、EU内での事業規模が同基準に合致する域外企業にも適用される。
同法案を巡ってはフランス、スペイン、イタリアなど一部の加盟国が、金融機関には製造業のようなサプライチェーンがないとして、修正を要求。理事会では妥協案として、銀行、投資ファンドなどを含む金融サービス事業者を適用の対象外とし、各加盟国の判断で含めるかどうかを決めることができるようにすることで合意した。
このほか、新ルールを段階的に施行し、発効してから3年間は従業員が1,000人以上で、全世界での売上高が3億ユーロ以上の企業(域外企業の場合は域内での売上高が3億ユーロ以上)に限って適用することでも合意した。
同法案は欧州議会の承認が必要。23年3月以降に採決となる見通しだ。議会内では加盟国による修正に対して、金融機関も人権、環境問題に責任があるとして「理解しがたい」(緑の党の議員)と批判する声が噴出しており、調整が難航しそうだ。