環境犯罪の取り締まり強化へ、欧州議会法務委が指令案承認

欧州議会の法務委員会は3月21日、環境犯罪の取り締まりを強化するための指令案を全会一致で承認した。欧州連合(EU)レベルで環境保護をより効果的なものにするため、環境犯罪の定義を明確化し、規制への重大な違反行為に対し、加盟国に禁固刑を含む刑事罰を科すことを義務付ける内容。指令案は近く、欧州議会本会議で採択される見通しで、その後は法制化に向けて閣僚理事会との交渉に入る。

指令案は欧州委員会が2021年12月に発表していた。環境犯罪の定義に関しては、違法な木材取引、水資源の枯渇につながる不正な開発・利用、船舶による汚染、EU化学物質規制(REACH規則)に対する違反、遺伝子組み換え(GM)作物の違法栽培、森林火災の原因となる行為、違法・無報告・無規制(IUU)漁業に関連した違法行為が新たにリストに加えられる。

加盟国は人の死や健康被害を引き起こしたり、大気・土壌・水質や動植物に深刻な被害を与える行為と、その可能性がある行為に対し、10年以上の禁固刑を科すほか、企業に対しては過去3年間の平均売上高の少なくとも10%の罰金を科すことが義務付けられる。企業に対する制裁には、補助金など公的資金へのアクセス禁止や、事業免許の取り消しなども含まれる。さらに「汚染者負担の原則」に従い、違反企業は損害を受けた環境の修復、被害者への補償、裁判費用の負担などの義務を負う。

指令案はこのほか、加盟国に環境犯罪を匿名で通報できるようにするとともに、通報者を保護する仕組みを整備するよう求めている。また、欧州委員会は2年ごとに指令の実施状況を欧州議会に報告し、環境犯罪のリストを更新する必要があるかどうか判断する。

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