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2010/1/22

企業情報 - 自動車メーカー

ルノーが生産移管計画見直し、欧州委は政府の介入を問題視

この記事の要約

仏自動車大手ルノーは、フランス国内での雇用維持を求める政府の意向を受け、主力車種の生産拠点を国外に移転する計画を見直す方針を固めた。欧州委員会は国内での生産継続を求めてルノーへの圧力を強める政府の対応を問題視しており、仏 […]

仏自動車大手ルノーは、フランス国内での雇用維持を求める政府の意向を受け、主力車種の生産拠点を国外に移転する計画を見直す方針を固めた。欧州委員会は国内での生産継続を求めてルノーへの圧力を強める政府の対応を問題視しており、仏側に説明を求めている。仏政府は経済危機で苦境に立つ自動車業界への公的支援に関連して、国内での生産維持を支援の条件としないことを確約した経緯があり、欧州委は合意を確実に履行するよう求めている。

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ルノーは今月上旬、人気小型車「クリオ」の次期モデルの生産をトルコのブルサ工場に集約する計画を打ち出し、13日には現行モデルの生産ラインがあるスペインとスロベニアの工場を閉鎖する方針を明らかにした。パリ近郊のフラン工場については「検討中」としていたが、仏国内での雇用喪失を懸念する地元自治体や労組などが反発を強め、サルコジ大統領やエストロジ産業担当相など主要閣僚からもルノーの対応を批判する発言が相次いだ。

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こうした中でサルコジ大統領は16日、ルノーのゴーン会長兼最高経営責任者(CEO)を大統領府に呼び、移転問題について協議。ゴーン会長は大統領の説得に応じ、フラン工場での生産継続と雇用の維持に同意した。大統領は声明で、同工場ではクリオの現行モデルが引き続き生産されるほか、将来は新型クリオの生産ラインも設置されると説明。さらに電気自動車の開発資金として1億7,000万ユーロをルノーに融資する計画も明らかにした。ルノーは会談の内容についてコメントを控えている。同社の広報担当者は15日、2012年からフラン工場で電気自動車「ゾエ」の生産を本格化させる計画を明らかにしていた。

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一方、欧州委のクルース委員(競争政策担当)は14日、仏政府が生産拠点の国外移転を阻止するためルノーへの圧力を強めている点を問題視し、仏側にこの間の経緯について説明を求める考えを示した。仏政府は昨年2月、ルノーなど国内メーカー3社に対する総額78億ユーロの支援策を打ち出したが、国内での雇用維持を支援の条件にしていたことから生産拠点を置く中・東欧諸国などで「保護主義的」との批判が高まり、欧州委が計画の見直しを要求。最終的に仏側が譲歩して欧州委から支援計画の承認を取り付けた経緯がある。クルース委員は「仏政府関係者の最近の発言は公約と明らかに矛盾している」と指摘。「経済ナショナリズムによって危機が10倍深刻になり、回復のチャンスを破壊する報復のスパイラルに陥る恐れがある」と警告した。

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これに対し、フランスのルルーシュ欧州問題担当相は15日に声明を発表し、仏政府はルノーの株主として経営に関与する権利があると反論。「一連の対応は完全にEUルールに沿ったものだ」と強調し、欧州委から正式な照会があれば直ちに対応する意向を示した。仏政府は現在、ルノーの株式15%を保有しており、エストロジ産業担当相は今回の問題に関連して、先に政府の出資比率を20%程度まで引き上げる可能性を示唆していた。

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