欧州連合(EU)の欧州委員会が実施する「欧州グリーンカーイニシアチブ(EGCI)」の一環に位置付けられる電気駆動システムの開発プロジェクト。ポーランド、ドイツ、オーストリア、イタリアの4カ国から8社・機関が参加している。
EGCIは、2008年の世界的な経済危機を背景に、景気回復と気候変動への対策として発足した官民パートナーシップ(PPP)の一つ。
AVTRに参加するドイツのフラウンホファー集積システム・デバイス技術研究所(IISB)が主導するプロジェクトでは、日本の軽自動車の仕様に沿った小型電気自動車のプロトタイプを開発した。
同プロトタイプは、2015年6月にイタリアのトリノにあるヴァレンティーノ公園で開催されたカーショー「パルコ・バレンティーノ・サロン&グラン・プレミオ」に出展された。
プロトタイプの開発には、フラウンホファー研究所(IISB)、独自動車部品メーカーのドレクスルマイアー、パナソニック、伊エンジニアリング会社のPolimodelとI-FEVSが参加。生産コストの低減やモジュラー構造化への配慮、イタリアのハイエンドデザインなどをキーワードとする電気自動車を開発することを目標とした。
フラウンホファー研究所(IISB)は電気自動車に搭載するバッテリーシステム全般の開発を担当。バッテリーモジュールは、ドレクスルマイアーグループの協力を得て設計・生産した。すでに量産化されており低コストで調達できる円筒型リチウムイオン充電池(タイプ18650)のセルをアジアの大手メーカーから調達し、8つのバッテリーモジュールを製造した。
各モジュールの重さは9.4キログラムで、1キログラム当たりのエネルギー容量は160Whとなる。
バッテリー監視システムには、セルの充電状態を均一にするためのセル・バランシング制御(パッシブバランシング)に、保護回路を内蔵したMOSFETの新しいプロトタイプが採用されている。このプロトタイプはパナソニックが開発した。
また、バッテリーマネージメントシステムは、フラウンホファー研究所(IISB)が開発した既存のシステムをAVTRプロジェクトの仕様に合わせて調整した。
イタリアのPolimodelとI-FEVSはこのバッテリーを使用した電気自動車のプロトタイプを完成させた。