「合意なき離脱」で医薬品の不足や食品高騰の恐れ、英政府が文書公表

英政府は11日、英国が合意のないまま欧州連合(EU)を離脱した場合の影響をまとめた文書を公表した。通関手続きの発生などによる物流の混乱で食品や医薬品の供給が不足し、生鮮食品などの価格上昇が起きると予測。特に低所得層が大きな打撃を受ける恐れがあると警告している。

文書には8月2日時点の分析であることが明記されており、ジョンソン政権が発足した直後に作成されたとみられる。英メディアが8月中旬、「キアオジ(ホオジロ科の鳥)作戦」と名付けられた内部文書として内容の一部を報じたが、政府は公開を拒んでいた。しかし、今月9日に議会下院で同文書の公開を求める動議が可決され、2日後に公表された。「合意なき離脱」の準備を担当するゴーブ国務相は「最悪のシナリオ」を想定したものだと強調しているが、ジョンソン首相はこれまで「適切な対策を講じれば国民への負担は最小限で済む」と説明していただけに、同氏の強硬離脱姿勢に対する批判が今後さらに高まりそうだ。

文書によると、合意なき離脱となった場合、英仏国境で通関手続きなどのため大渋滞が発生し、大型トラックが国境を越えるのに最大で2日半遅れる可能性がある。離脱初日に物流が通常の40%に落ち込み、混乱は最大3カ月続く恐れがあると予測。生鮮食品などの価格上昇によってパニック買いが広がれば、サプライチェーンの混乱に拍車がかかり、各地で抗議デモが起き、暴動に発展するリスクもあると警告している。

一方、人の移動では英国と大陸欧州の間で旅行者などの入管手続きが発生し、空港やユーロスターの駅が混雑すると予測。このほか国境を越えた金融サービスが一時的に停止したり、警察当局と関連機関の情報共有などに影響が及ぶリスクを指摘している。

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