独仏両政府は13日、米フェイスブックが発行を計画している暗号資産(仮想通貨)「リブラ」について、リスク対応が不十分で、通貨政策に関する国家の主権が侵害される恐れもあるとして、利用を認めない方針を表明した。リブラをめぐっては、多くの国の中央銀行や金融当局が懸念を示しているが、独仏が認可阻止の姿勢を打ち出したことで、今後の展開に影響が及びそうだ。
リブラはフェイスブックがクレジットカード大手ビザ、マスターカードや配車アプリ大手ウーバーなど27社と組んで発行を計画しているデジタル通貨。ビットコインなど他の仮想通貨と異なり、法定通貨など実質資産に裏付けされ、価値が変わらない点が最大の特徴だ。2020年の導入を目指している。
独仏はフィンランドの首都ヘルシンキで開かれたユーロ圏財務相会合に合わせて共同声明を発表した。ショルツ独財務相とルメール仏経済・財務相は声明で、フェイスブックが示した計画では投資家保護、マネーロンダリング(資金洗浄)、テロ資金への流用といった「リスクに正しく対応できない」と指摘。さらに、通貨政策に関する権限は国家に固有のものであり、「いかなる私的団体も行使することはできない」と強調した。
一方、欧州中央銀行(ECB)のクーレ専務理事はユーロ圏財務相会合後の記者会見で、フェイスブックのリブラ構想は仮想通貨をめぐる議論を加速させるきっかけになったと指摘。「中央銀行が公的な仮想通貨を発行する構想を先に進める必要がある」と述べた。ショルツ氏も「欧州各国の中央銀行が仮想通貨をめぐる取り組みを加速させることを望む」と述べ、欧州連合(EU)として暗号資産の管理・運用に関する共通ルールを策定する必要があるとの考えを示した。