EU司法裁判所の一般裁判所は10日、バルト海経由でロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」に接続するドイツ国内のパイプライン「オパール」の運用をめぐり、オパールの年間輸送能力に占める露国営ガス会社ガスプロムの輸送量比率の大幅な拡大を認めた欧州委員会の決定を無効とする判決を下した。欧州委は中東欧のガス市場に及ぼす影響を十分に検証せずガスプロムの権益拡大を容認したとして、決定の無効化を求めたポーランドなどの主張を認めた格好。欧州委は2カ月以内にEU司法裁判所に上訴することができる。
オパールはノルドストリームに接続する陸上パイプラインで、ドイツ経由で中東欧方面に天然ガスを運ぶ。エネルギーインフラの独占的利用を阻止するためのEU規制(第3次エネルギーパッケージ)に基づき、2011年の完成以来、オパールの輸送能力(年間360億立方メートル)に占めるガスプロムの輸送量比率は最大50%に制限されていたが、欧州委は同社に対する競争法上の調査を経て、16年10月に同比率を80%まで拡大することを認めた。これに対し、ポーランド政府と同国の国営ガス会社PGNiGが直ちに決定の無効化を求めて提訴。その後、リトアニアとラトビアが原告側に加わった。
一般裁判所は判決で「欧州委はドイツが享受する利益と他のEU加盟国が受ける悪影響のバランスを適正に評価しておらず、EUエネルギー連帯の原則に反する」と指摘。「オパールパイプラインの運用ルールの変更がポーランドにおける天然ガス供給にどのような影響が及ぶか、欧州委は十分に検証しなかった」と続け、決定の無効化を言い渡した。