新欧州委員候補、欧州議会が3人を承認せず

欧州議会は10日、次期欧州委員会の委員候補のうち、フランスのシルビー・グラール氏の承認を拒否した。これによってハンガリー、ルーマニアの候補と合わせて3人が就任を認められないことになり、フォンデアライエン次期欧州委員長が率いる新体制の発足がずれ込む可能性が出てきた。

フォンデアライエン次期欧州委員長は9月10日に新欧州委員の人事案を発表。欧州議会の承認を経て、11月1日に新欧州委が発足することになっていた。

しかし、欧州議会の公聴会で、ハンガリーのラースロー・トローチャーニ候補(EU拡大担当)とルーマニアのロヴァナ・プルンブ候補(運輸担当)に利益相反の疑いが浮上し、議会は1日に承認拒否を決定。これに続いてグラール候補も承認しなかった。

グラール候補は仏マクロン大統領の側近で、国防相を務めた経歴がある。要職である域内市場担当委員となるはずだった。欧州議会議員時代の2013~15年に米コンサルタント会社から毎月約1万ユーロを受け取っていたことなどが欧州議会の公聴会で問題視された。自身は潔白を主張したが、欧州議会の単一市場・産業委員会は10日、説明が不十分として反対82票、賛成29票の反対多数で同候補の委員就任を承認しないことを決めた。

欧州委員候補の承認をめぐっては、中東欧出身者が欧州議会の資格審査で問題視され、拒否される例は少なくないが、主要国の候補が承認されないのは稀だ。次期欧州委員長の人事で、欧州議会で最大会派となった中道右派・欧州人民党(EPP)が推すウェーバー欧州議員(独出身)の指名が有力視されていたが、マクロン大統領が反対に回ったことで実現しなかったことから、EPPの主導で横やりを入れたとみられている。マクロン大統領は同日、「政治のゲーム」でグラール候補が承認されなかったと批判した。

フォンデアライエン次期欧州委員長は3人の候補をフランスとハンガリー、ルーマニアが新たに推薦する他の候補と入れ替えなければならない。新候補が前候補と同じ担当分野になるとは限らず、人事の大幅な組み直しを迫られる可能性がある。また、欧州議会は24日の本会議で、委員候補を一括で承認するかどうかを決めるため、新たな候補に問題があれば承認がずれ込み、新欧州委の発足が遅れることになりかねない。

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