英国の下院が6日に解散し、12月12日の総選挙に向けて5週間の選挙戦が本格的に開始された。欧州連合(EU)離脱方針が最大の争点で、ジョンソン首相率いる与党・保守党は議席の過半数を取り戻し、政府がEUと合意した新たな協定案に沿って早期に離脱することを目指す。
英下院の定数は650議席。総選挙は全選挙区で、得票が最も多い候補が当選する単純小選挙区制で行われる。
ジョンソン首相は10月17日に新たな離脱協定案でEUと合意したが、英下院が協定案の早期採決に応じないため、10月31日の離脱を断念。離脱期限が最長で2020年1月31日まで延期されることになった。
首相は保守党が総選挙で過半数を確保し、新協定案を確実に可決できる体制を整えたい考え。1月31日までにEUから離脱することを公約に掲げ、選挙に臨む。
野党側では最大野党の労働党が政権奪回を目指す。EUと再交渉し、よりEUとの距離が近い離脱協定案をまとめた上で、それに沿って離脱するか、EUに残留するかを問う国民投票を実施し、6カ月以内に問題を決着させるという公約を掲げている。ただ、コービン党首は国民投票に至った場合、離脱と残留のどちらを目指すか明確にしていない。こうした曖昧な姿勢を支持者の中の残留派が嫌い、票が他の野党に流れる恐れがある。
これに対してEU残留を主張する野党第3党の自由民主党と緑の党、ウェールズの地域政党「プライド・カムリ」(ウェールズ党)は7日、選挙協力すると発表した。60選挙区で候補者を一本化し、2大政党に挑む。対象選挙区のうち43区で自由民主党、10区で緑の党、7区でプライド・カムリが候補者を擁立する。
一方、野党第2党のスコットランド民族党(SNP)もEU残留を掲げているが、この共闘には加わらない。スタージョン党首は8日、仮に総選挙で単独過半数を確保した政党がない場合、労働党を中心とする連立政権樹立を支持する意向を表明した。しかし、スコットランド独立の是非を問う2度目の住民投票実施への支持を条件としていることから、労働党は拒否している。
世論調査では保守党が10ポイント程度の差を付けて労働党をリードしている。しかし、前回の総選挙では世論調査で圧倒的に優勢だったにもかかわらず、議席を減らして過半数を割り込み、少数与党に転落した。
今回の総選挙では、EUからの強硬離脱を唱えるファラージ氏率いるブレグジット(離脱)党が、ジョンソン首相がまとめた離脱協定案では完全な離脱にならないと批判し、「合意なき離脱」を掲げて全選挙区に保守党候補の対抗馬を擁立する方針で、保守党と離脱派の票を奪い合う構図となる。巻き返しを図る主要野党にとっては追い風だ。このため予断を許さない情勢で、保守党が第1党となっても単独過半数に届かない可能性がある。