英下院、EU離脱関連法案の骨格承認

英下院は12月20日、政府と欧州連合(EU)が合意した離脱協定案の骨格を賛成多数で承認した。協定案はこれまで何度も下院で拒否されたが、ジョンソン首相は先の総選挙で過半数を確保した与党・保守党の支持を後ろ盾に最初の関門を突破。関連法案は1月9日までに可決する見通しで、1月末の離脱が確実となってきた。

関連法案はEUと10月に合意した新たな離脱協定案の批准に必要な法律。下院は第2読会の採決で、賛成358票、反対234票で承認した。第2読会は法案の基本方針の是非を判断し、詳細な審議に入るかどうかを決める手続き。今回の承認を経て、年明けに下院で最終審議が行われる。

ジョンソン首相は離脱協定案の関連法案を短期間で審議することを下院が10月に拒否したことから、事態打開のため総選挙を12月12日に実施。保守党は大勝し、定数650の下院で解散前から67議席も増やし、過半数の326議席を大きく超える365議席を確保した。第2読会の採決では保守党議員が支持したほか、選挙で大敗した最大野党・労働党で6人が造反し、32人が棄権に回るなどして、可決にこぎ着けた。

関連法案が下院で可決されるのは確実。上院の承認、エリザベス女王の裁可を経て、1月中に成立する見込みだ。EU側も欧州議会が1月29日までに離脱協定を批准する予定で、同月31日に英国がEUを離脱することになる。

英国とEUは離脱後も20年12月末まで移行期間が設けられるため、当面は現状維持の関係が続く。移行期間中に自由貿易協定(FTA)など将来の関係の構築に向けた交渉を進める。

最大の焦点となるFTA締結には、通常は長い時間が必要で、11カ月という交渉期間は短すぎる。このため、離脱協定案には英国側が20年7月1日までに要請すれば、移行期間を22年12月末まで延長することが可能となる条項が盛り込まれている。

しかし、ジョンソン首相は関連法案に、政府による期間延長を禁止することを盛り込んだ。交渉の期限を区切ることで、EU側に圧力をかけ、英国に有利な条件でまとめたいという思惑がある。ただ、交渉が難航すれば、期限内に妥結せず、「合意なき離脱」に至る恐れがある。

ジョンソン首相は目標とする1月末の離脱を確実にした一方で、スコットランドがEU離脱に巻き込まれることに反発し、英国からの独立を求める動きが再燃していることが新たな頭痛の種となっている。

スコットランドは英国で16年に実施されたEU離脱の是非を問う国民投票で、残留派が多数を占めた地域。先の総選挙でも残留を求める野党第2党のスコットランド民族党(SNP)が13議席増の48議席を確保し、離脱への“ノー”を突きつけた。

これを受けてスコットランド行政府のスタージョン首相は19日、英政府に独立の是非を問う住民投票の再実施を認めるよう要求した。

スコットランドでは14年に独立をめぐる住民投票が行われたものの、僅差で独立が否決された経緯がある。スタージョン首相は独立を果たし、スコットランドだけはEUに残留することを目指し、2度目の住民投票を実施する権限をスコットランド議会に与えるよう政府に要求している。

しかし、政府は認めない方針で、双方の対立が激化することが予想される。スタージョン首相は政府が認めない場合に、あらゆる手段で対抗していく考えを示した。

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