ドイツ政府の諮問機関「国家プラットフォーム・モビリティの未来(NPM)」は13日に発表したモビリティ分野に関する報告書の中で、電動車の普及や生産の自動化による効率向上により、ドイツの自動車業界で最大41万人の雇用が失われる恐れがあるとの予測を発表した。ドイツでは、連邦政府が昨年9月に発表した気候保護プログラムの実施により、電動車の普及が進む可能性があるとしている。
ドイツ連邦政府は昨年9月、同国の2030年の気候保護目標の達成に向けた包括的な措置の概要をまとめた「気候保護プログラム
2030」を発表した。同プログラムでは、2030年までに電動車の国内保有台数で700万~1,000万台を見込んでいる。
NPMの報告書では、電気自動車の生産では自動化が可能な工程が多いため、効率化が進むと予想している。また、ドイツ政府の気候保護プログラムが目指す方向に電動車の普及が進むと同時に、電動車の分野におけるドイツ産業の競争力が改善しなければ、電動車の普及に伴い、バッテリーセルや電動車の輸入需要がさらに拡大し、2030年までに業界就業者数の著しい減少が予想されると指摘している。
NPMの報告書では、このような課題への対策として、自動車業界は、事業モデルの転換や自動車向けのソフトウエアなどの分野で従業員のノウハウを強化する必要があるとしている。また、ドイツの自動車産業における付加価値と雇用を堅持するためには、自動車産業の全体的な価値連鎖(バリューチェーン)を国内に構築する必要があると指摘している。
なお、自動車産業の構造転換に対応するための人材育成を個別企業が単独で実施するのは困難であるとし、業界全体の人材育成コンセプトが必要であるとしている。例えば、地域別のコンピテンスハブを設け、連邦労働庁や地域の教育機関、事業所が人材育成プログラムの開発・提供などで協力する取り組みを提案している。