2010/1/11

総合 –EUウオッチャー

テロ対策の全身スキャナー、共通ルール策定視野に

この記事の要約

EU加盟国は7日、ブリュッセルで航空テロ対策の専門家による会合を開き、昨年12月の米機爆破未遂事件を受けたテロ防止策として、域内の主要空港に全身スキャナーを設置する構想について協議した。衣服の下を透視できるスキャナーの導 […]

EU加盟国は7日、ブリュッセルで航空テロ対策の専門家による会合を開き、昨年12月の米機爆破未遂事件を受けたテロ防止策として、域内の主要空港に全身スキャナーを設置する構想について協議した。衣服の下を透視できるスキャナーの導入をめぐって加盟国の対応にはばらつきがあり、現在は各国の判断に委ねられている。専門家会議は加盟国が一致した行動を取る必要があるとして、欧州委員会に対し、安全対策を強化しながら搭乗者のプライバシーや健康などに配慮した共通ルールを策定するよう要請。欧州委もEU全体で共通の対策を講じる必要があるとして、加盟国および欧州議会との調整にあたる意向を示している。

\

昨年末のテロ未遂事件では、容疑者は爆発物を下着に縫い込んでオランダのスキポール空港での保安検査をすり抜けたとされる。全身スキャナーは爆薬など非金属の危険物を発見しやすい反面、身体の形状が鮮明に映し出されるため、乗客のプライバシー侵害につながるといった批判が根強い。

\

欧州委はテロ対策の一環として、2008 年に域内の空港へのスキャナー導入を推進するための法案を策定した。しかし、欧州議会がプライバシー侵害や放射線被曝による健康への影響などを理由に難色を示したため、法案を取り下げた経緯がある。

\

EU加盟国ではオランダと英国がテロ未遂事件後の早い段階で全身スキャナーの導入を決めた。アムステルダム近郊のスキポール空港では近く15台が稼動する見通しで、オランダ政府はさらに60台を購入する計画だ。英国ではヒースロー空港やマンチェスター空港への導入が予定されている。さらに7日にはイタリアのマローニ内務相がローマのレオナルド・ダ・ビンチ空港とベネチア空港に計10台を設置する方針を明らかにした。

\

これに対し、ベルギーやスペインは導入に慎重な姿勢を見せており、ドイツやフランスは態度を保留している。ベルギーのスフーペ交通担当国務長官はAPテレビジョン・ニュースとのインタビューで、EU加盟国がテロ対策で歩調を合わせることが重要だとしたうえで、域内の空港ではすでに「十分に厳しい」チェックが実施されていると強調。「米国の反応はやや大げさだという印象を受ける」と発言し、EUにスキャナー導入の義務化を求めている米当局をけん制した。

\

一方、ドイツ内務省のパリス報道官は、加盟国の大部分がEU全体で足並みを揃えなければならないとの認識で一致しているとしたうえで、全身スキャナーを導入するには空港での保安検査のルールを定めたEU規則を改正する必要があると指摘。ドイツ政府がスキャナー導入を認める条件として◇セキュリティが確実に強化される◇健康に悪影響が及ばない◇プライバシーなど個人の権利を侵害しない――の3つを挙げた。

\