2010/1/11

総合 –EUウオッチャー

EU公務員の賃上げ拒否は「違法」、欧州委が加盟国を提訴

この記事の要約

欧州委員会は6日、EU公務員の給与改定をめぐり、加盟国が給与引き上げ勧告を拒否したのはEUルールに反するとして、加盟27カ国を欧州司法裁判所(ECJ)に提訴する方針を明らかにした。欧州委はEU規則に基づいて行った賃上げ勧 […]

欧州委員会は6日、EU公務員の給与改定をめぐり、加盟国が給与引き上げ勧告を拒否したのはEUルールに反するとして、加盟27カ国を欧州司法裁判所(ECJ)に提訴する方針を明らかにした。欧州委はEU規則に基づいて行った賃上げ勧告には法的拘束力があると主張し、ECJに対して迅速に判断を下すよう求めている。

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EUでは約5万人の公務員が欧州委、欧州議会、閣僚理事会などの諸機関に勤めている。欧州委は昨年11月、物価上昇などを考慮して、昨年7月に遡って給与水準を前年比3.7%引き上げる案をまとめた。しかし、金融危機で財政赤字が拡大し、自国の公務員給与の大幅削減に踏み切った加盟国がこれに反発。12月末に賃上げ率を勧告の半分にあたる1.85%とすることで合意した。加盟国のうち7カ国は採決を棄権したが、欧州委は合意の無効化を求めてすべての加盟国を一括提訴している。

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EU公務員の給与は加盟国が合意したルールに基づき、英独仏など域内の主要8カ国における前年の公務員給与と、EU本部があるブリュッセルの生活費を基に算出され、加盟国が拠出するEU予算から支払われている。たとえば欧州委で働くスタッフの月給は2,550ユーロ(事務官)から1万7,700ユーロ(局長クラス)となっている。

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職員労組は勧告通りの賃上げを求めて抗議集会を計画しており、給与問題をめぐる対立が先鋭化すれば新基本条約「リスボン条約」に基づいて発足したEUの新体制が機能不全に陥る可能性もある。1973年にはオイルショックを背景に今回と同様の賃上げ問題が訴訟に発展したが、当時は欧州委の主張を認める判決が言い渡されている。

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