2010/1/25

産業・貿易

米の金融規制案、EUの追随は見込み薄か

この記事の要約

米オバマ大統領が21日、金融業界に対する新たな規制案を発表したことを受け、EU筋はロイター通信に対して22日、EUが域内で同様の措置を導入する可能性はないとの見方を明らかにした。大統領の提案内容に理解を示す一方、EUはす […]

米オバマ大統領が21日、金融業界に対する新たな規制案を発表したことを受け、EU筋はロイター通信に対して22日、EUが域内で同様の措置を導入する可能性はないとの見方を明らかにした。大統領の提案内容に理解を示す一方、EUはすでに独自の手段を通じて金融業界の再編や銀行のリスク抑制策に着手しており、大統領の案はEUの目的には適合しないとしている。

\

オバマ大統領が発表した規制案は◇金融機関の事業範囲を制限し、預金業務をリスク投資業務から分離する◇金融機関の負債規模を一定に制限する――の2点が柱。しかし、EUが重視しているのは銀行の自己資本規制改革と金融規制の強化であり、欧州議会はすでに関連法案の審議を始めている。また、EUは関連子会社の売却などによる金融機関の規模縮小や金融市場への新規参入促進なども進めており、こうした措置が効果を見せ始めていることから、当面は現在の方向を維持し、経過を見守る方針とみられる。

\

一方、英仏独などEU主要国の政府高官らからは、「あくまで米国内を対象とした規制であり、国際金融市場に適用されるものではない」として、オバマ大統領の方針を支持する発言が相次いでいる。英財務省のマイナーズ政務次官(金融サービス担当)は、「これまで英当局が進めてきた方向とまさに一致している」と指摘。影の財務相である保守党のオズボーン議員は「保守党が政権を取れば、同様に銀行業務を分離させる」と語った。フランスのラガルド財務相は、「一歩前進だ。非常に良い」とコメント。金融取引税の導入を積極的に検討しているドイツの政府関係者は、「現在の議論において有用な提案」と評価した。さらに、金融専門家の間には、「巨大銀行を破たん処理できないという問題は欧米に共通の問題であり、その見直しと規制における協調が必要との考えも一致している。米国の新規制が有効と分かれば、欧州主要国が足並みを揃える可能性がある」との見方もある。

\

\

■金融業界は影響を懸念

\

\

規制案に盛り込まれた事業範囲の制限は、預金者の保護が目的。商業銀行部門と投資銀行部門を分離し、安全性が高い預金をヘッジファンドやプライベートエクイティなどの高リスクの市場から引き離す。自己勘定取引が大幅に制限されることになる。

\

これについて金融業界関係者からは、実際に導入された場合の影響を懸念する声が上がっている。事業部門の分離を余儀なくされれば、収益力が大幅に低下するためだ。米国で業務を行う欧州の銀行のなかでは、預金額が大きい英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)、スイスのUBS、仏BNPパリバなどへの影響が指摘されている。ただし、欧州の金融機関は先ごろの金融危機を受けて自己勘定取引を大幅に縮小しているケースが多く、収益に占める自己勘定取引の割合は1~2%程度とみられており、米銀ほどの影響はないとの見方が多い。

\