2010/1/25

環境・通信・その他

空港への全身スキャナー設置、EUが決定見送り

この記事の要約

EU加盟国は21日、スペインのトレドで開いた非公式司法・内相理事会で、航空機爆破テロの防止策について協議したが、域内の空港への全身スキャナーの設置に関する決定は見送った。健康への影響やプライバシー保護の観点から、現在、欧 […]

EU加盟国は21日、スペインのトレドで開いた非公式司法・内相理事会で、航空機爆破テロの防止策について協議したが、域内の空港への全身スキャナーの設置に関する決定は見送った。健康への影響やプライバシー保護の観点から、現在、欧州委員会が調査を進めており、加盟国は報告書がまとまった段階で改めて協議することで一致した。

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米政府は昨年12月の米機爆破テロ未遂事件を受けて主要空港への全身スキャナーの設置を進めており、EUに対しても同様の対策を求めている。理事会に出席した米国土安全保障省のナポリターノ長官は「アルカイダは知力を尽くして攻撃を仕掛けようとしており、我々は万全の対策をとらなければならない」と指摘。EU側にスキャナーの導入を急ぐよう強く求めた。同長官によると、米国ではすでに40台の全身スキャナーが稼働しており、さらに来年までに少なくとも450台の設置を計画しているという。

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EU内では衣服の下を透視できる全身スキャナーの導入をめぐり、加盟国の対応が分かれている。昨年末のテロ未遂事件の舞台となったオランダと英国が正式に導入を決定しており、イタリアとフランスも試験的に導入する方針。これに対し、北欧諸国やベルギー、スペインなどは導入に慎重な姿勢をみせている。ドイツはこれまで態度を保留していたが、デメジエール内相は今回、半年以内に導入を正式決定する可能性を示唆した。同内相は「スキャナーは安全かつ効果的でなければならず、同時にプライバシーを侵害するものであってはならない」としたうえで、「オランダで良好な試験結果が得られている」と述べ、今年半ばまでに結論を出したい考えを示した。

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一方、欧州委のバロ委員(自由・安全担当)は、EU全体で共通の対策を講じる必要があるとしたうえで、「プライバシー保護の観点からスキャナーで撮影された画像がただちに破棄されるようにしなければならない」と指摘。同委員の後任候補であるレディング現情報社会・メディア担当委員も先に行われた欧州議会の公聴会で、「EU市民は“もの”ではない。セキュリティの要請を理由にプライバシー侵害が正当化されることがあってはならない」と述べている。

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