2010/2/8

総合 –EUウオッチャー

米国への金融取引情報の提供、欧州議会専門委が協定破棄勧告

この記事の要約

欧州議会の「市民の自由・司法・内政委員会」は4日、金融取引情報の提供に関する米国との協定の破棄を求める勧告案を賛成多数で可決した。EU加盟国は米国が進めるテロ対策を支援するため、国際銀行間通信協会(SWIFT)を通じた情 […]

欧州議会の「市民の自由・司法・内政委員会」は4日、金融取引情報の提供に関する米国との協定の破棄を求める勧告案を賛成多数で可決した。EU加盟国は米国が進めるテロ対策を支援するため、国際銀行間通信協会(SWIFT)を通じた情報提供を容認する方針で合意しているが、同委は協定案に盛り込まれたデータ保護対策が不十分と指摘。今月11日の欧州議会本会議で協定案を否決するよう勧告した。

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米国は2001年の同時多発テロを機にテロ資金根絶に向けた取り組みを強化しており、ベルギーに本部を置くSWIFTは財務省の求めに応じ、テロ組織との関係が疑われるケースについて、顧客の氏名、口座番号、受取人の氏名、送金の額や目的といった情報を提供してきた。

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これについてEU内では、SWIFTからの情報提供が明るみに出た2006年以来、加盟国の同意を得ずにEUと比べてデータ保護対策が甘いとされる米国に個人情報が移転されることへの反発が強まった。こうした中で加盟国は昨年11月、◇SWIFTが米側に提供するデータはテロ活動への関与が疑われる人物に関する情報に限定する◇EU内での金融取引についての情報を対象から除外する◇財務省から捜査当局や他の政府機関にデータを転送する際の手続きを厳格化する――などの条件を盛り込んだうえで、有効期限を9カ月とする暫定的な協定の内容で合意。欧州議会の承認を経て今月中に協定を発効させ、改めて米側と新協定の締結に向けた交渉に入る計画だった。

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市民の自由委では29対23(棄権1)で協定案の破棄を求める勧告案が可決された。勧告案をまとめたオランダ選出の議員は「テロとの戦いを口実に際限なく市民の自由が脅かされる事態を容認することはできない」と強調した。

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