2010/2/15

EUがギリシャ支援で合意、財政危機対応で協調

この記事の要約

EUは11日にブリュッセルで開いた特別首脳会議で、財政危機に陥っているギリシャを支援することで合意した。ギリシャが財政再建計画を着実に実施することを条件に、必要に応じて他のユーロ参加国が協調して支援を行う。具体策は16日 […]

EUは11日にブリュッセルで開いた特別首脳会議で、財政危機に陥っているギリシャを支援することで合意した。ギリシャが財政再建計画を着実に実施することを条件に、必要に応じて他のユーロ参加国が協調して支援を行う。具体策は16日のEU財務相理事会で協議される見通しだ。

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ファンロンパイEU大統領(欧州理事会常任議長)が召集した今回の特別首脳会議は、本来はEUの向こう10年の成長戦略が主要議題だった。ところが、ギリシャの財政危機が深刻化し、信用不安が他のユーロ参加国にも飛び火する懸念が強まってユーロの信用が揺らぐ中、同問題が大きくクローズアップされた。

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採択された共同声明は「ユーロ圏全体の金融安定を保つため、ユーロ参加国が必要に応じて断固たる協調行動をとる用意がある」として、事態がさらに深刻化した場合に、ドイツなど他のユーロ参加国が何らかの支援に乗り出す姿勢を打ち出した。ただ、支援実施を見送り、具体的な支援策も固まっていないことから、ユーロの信用不安は解消されず、同日にユーロ安が一段と進んだ。

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ギリシャの財政危機は、昨年10月の政権交代に伴い、前政権が財政赤字を“粉飾”して過少申告していたことが発覚したのが発端。当初は国内総生産(GDP)比3.7%とされていた2009年の赤字は、実際にはユーロ圏最悪の同12.7%と、EUの財政規律で上限となっているGDP比3%を大幅に上回る見込みだ。これを受けてギリシャ国債の格付けが引き下げられて金融市場に動揺が広がっている。ギリシャは国債償還や赤字穴埋めのため、年内にGDPの20%に相当する530億ユーロを国債発行により調達する計画だが、リスクを反映して長期国債の利回りが上昇しており苦しい状況。一刻も早く財政不安を払しょくし、市場の信頼感を取り戻すことが急務となっている。

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ギリシャは歳出削減、増税などにより赤字を2012年までにGDP比3%以下に削減することを目指す財政再建計画を提示済みだ。これをEUは16日の財務相理事会で検討し、勧告をまとめる。ギリシャは同勧告に沿った財政再建を求められる。さらに、欧州委が監視下に置いて定期的に実施状況をチェックし、必要なら追加措置を命じる。EUは共同声明で、2010年に赤字を前年比4ポイント削減することを求めると同時に、定期チェックに欧州中央銀行(ECB)も加わり、さらに国際通貨基金(IMF)に対してギリシャの財政再建に助言を求める方針も盛り込んだ。しかし、公務員の人件費削減を含む厳しい財政緊縮は、国民に大きな犠牲を強いるとして世論が反発。全国で公務員によるストライキが起きており、政府が再建を推進できるかどうか不透明だ。

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ギリシャ支援、独仏主導

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EUが恐れているのはギリシャがデフォルト(債務不履行)に陥ることだけではなく、同じく財政が悪化しているポルトガル、スペインなどへの信用不安の波及。それが実現すると、ユーロの信用問題に加え、これらの国に巨額の貸し付けがある他の国の銀行も大きな痛手を負う。とくに影響があるのがドイツとフランス。国際決済銀行のデータによると、ギリシャ、ポルトガル、スペインの外国銀行に対する債務残高(昨年9月末時点)は、ドイツの銀行が3,308億ドルで最高。フランスの銀行が3,068億ドルで続く。

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このため、今回の首脳会議では独仏がギリシャへの支援を主導。債務保証、緊急融資、国債買い支えといった支援策が決まるとの観測も出ていた。結果的に具体策に踏み込まなかったのは、ギリシャが現時点での金融支援を不要と主張したためとされるが、非ユーロ圏の英国がIMFによる支援を望むなど、加盟国間で意見の相違があることも影響したという見方がある。

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ただ、ギリシャは4、5月に巨額の国債償還を控えており、これを乗り切るために支援が必要となるとの見方が強い。ユーロ圏財務相会合の議長を務めるルクセンブルクのユンケル首相は支援策について、2国間レベルでの債務保証、融資などが有望で、ユーロ参加国共同のユーロ債発行は難しいとの考えを示している。

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