2010/2/15

産業・貿易

EU金融監督機関の権限を強化、欧州議会で修正案提出

この記事の要約

EUが新たな金融監督機関を設立する案をめぐり、新機関の権限を強化する方向へ修正する動きが出てきた。加盟国が新機関の決定に従わなくてもいいとする現在の法案を問題視したもので、欧州議会で10日行われた審議で修正案が提出された […]

EUが新たな金融監督機関を設立する案をめぐり、新機関の権限を強化する方向へ修正する動きが出てきた。加盟国が新機関の決定に従わなくてもいいとする現在の法案を問題視したもので、欧州議会で10日行われた審議で修正案が提出された。ただ、金融主権を重視する英国が修正に反対するのは必至で、激しい論戦が展開されそうだ。

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新設されるのは、域内の国境を超えて活動する金融機関を個別に監督する「欧州金融監督システム(ESFS)」と、域内の金融システム全体を監視し、リスクを早期に把握して警報を出す「欧州システム・リスク理事会(ESRB)」。金融危機の再発防止策として、EU加盟国が昨年末に正式合意した。欧州議会の承認を得た上で、来年末までに新機関を始動させる予定となっている。

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焦点となっているのはESFSの権限。ESFSは加盟国が個別に行う監督を調整する機関で、日常の監視活動は各国当局が引き続き行うことになっているが、何らかの問題が起きて当事国の当局が対応策で合意できない場合、拘束力のある決定を下す権限を持つ。ただ、加盟国に公的資金注入など財政出動を伴う措置を強制することはできない。さらに、当事国がESFSの決定を不服とした場合、事実上の拒否権を行使することができる。いずれも英国に譲歩して法案に盛り込まれたものだ。

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これに関しては、EUレベルの金融監督体制強化を骨抜きにするとの批判があり、欧州議会では中道右派・欧州人民党(EPP)のガルシア議員(スペイン)らが新機関の権限を強化する修正案を提出した。

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また同議員は、金融危機の再発で救済が必要となった銀行に金融支援を行うため、域内銀行が原資を拠出して「欧州金融保護基金」を創設することも提案した。

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欧州議会内では新機関の権限を具体的にどこまで強化するかについて意見は統一されておらず、修正案をめぐる審議は難航が予想される。また、修正案が可決されたとしても、成立には加盟国の承認が必要で、英国が抵抗するのは確実だ。

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