2010/3/8

総合 –EUウオッチャー

ギリシャが追加財政再建策発表、増税などで赤字48億ユーロ削減

この記事の要約

財政危機に陥っているギリシャ政府は3日、追加の財政再建策を発表した。財政赤字削減に懸命に取り組んでいることをEUや金融市場にアピールするもので、歳出削減、増税により国内総生産(GDP)の2%に相当する48億ユーロの赤字を […]

財政危機に陥っているギリシャ政府は3日、追加の財政再建策を発表した。財政赤字削減に懸命に取り組んでいることをEUや金融市場にアピールするもので、歳出削減、増税により国内総生産(GDP)の2%に相当する48億ユーロの赤字を追加で削減する。

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ギリシャは増税で24億ユーロ、歳出カットで24億ユーロの赤字削減を達成する計画。増税では付加価値税(VAT)の税率を19%から21%に引き上げるほか、1月に引き上げたばかりのたばこ・酒税を再度引き上げる。年収10万ユーロを超える高額所得者への課税や、高級車、ヨット、宝石などぜいたく品への課税も強化する。歳出面では、年3回の休暇シーズンに公務員に支払うボーナスの30%削減、公的年金の支給削減が柱となる。

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2009年の財政赤字がユーロ圏で最悪の国内総生産(GDP)比12.7%に膨らんだギリシャは、赤字を2012年までにEUの財政規律で上限となっているGDP比3%以内に抑える必要がある。2010年は4ポイント減のGDP比8.7%まで削減しなければならない。今回の追加財政再建策は、同計画の実現を危ぶむEUや金融市場の不安を払しょくするのが狙い。欧州委員会のレーン委員(経済通貨問題担当)は1日、ギリシャを訪問し、今年の財政赤字削減目標を確実に達成するためには追加措置が必要と指摘していた。ギリシャはすでに厳しい歳出削減を打ち出しており、これに抗議する官民のストが激化しているが、パパンドレウ首相は「国家の生き残りのために必要だ」と述べ、今回の決定への理解を求めた。

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市場は評価、国債入札成功

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ギリシャにとって当面の最大のハードルは、4、5月に迎える総額200億ユーロを超える国債償還。新たな国債発行で資金を調達する必要があるが、信用不安が収まらなければ市場にそっぽを向かれ、行き詰まる恐れがある。今回の追加財政再建策は市場で一定の評価を受け、3日の債券市場で10年物ギリシャ国債の利回りは0.18ポイント下がって5.96 %となり、約1カ月ぶりの低水準まで回復。ユーロ圏の指標であるドイツ国債との利回り格差も、前日は3%を超えていたが、2.91%まで縮小した。さらに4日に実施された10年物国債の入札では、3倍を超える応募超過となり、50億ユーロの調達に成功した。

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一方、EUは欧州委のバローゾ委員長が「財政再建が軌道に乗った」と歓迎の意を表明した。ただ、ギリシャが期待している金融支援については、具体的な動きはなく、ユーロ圏財務相会合の議長であるルクセンブルクのユンケル首相兼財務相は「ユーロ圏全体の金融安定を保つため、ユーロ参加国が必要に応じて断固たる協調行動をとる用意がある」と、2月11日の声明内容を繰り返すにとどまった。独メルケル首相も5日にベルリンでパパンドレウ首相と会談したが、「ギリシャから支援要請がなかった」として、具体的な支援策には触れなかった。

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2月の首脳会議でギリシャ支援を打ち出したEUでは、独仏を中心に4、5月の国債償還を乗り切るため、ドイツ復興金融公庫(KfW)などユーロ圏の政府系金融機関がギリシャ国債を購入するという案が取りざたされているが、固まってはいない。ギリシャでは今回も肩透かしを食ったことで、これまで否定してきた国際通貨基金(IMF)による支援に目を向ける動きが出ており、パパコンスタンティヌー財務相は3日、「我が国はEUの連帯を望み、ユーロ圏からの支援を期待しているが、IMF(による支援)という選択肢も除外できない」と語った。

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