2010/3/8

環境・通信・その他

独通信記録保管ルールに違憲判決、EU指令にも影響か

この記事の要約

ドイツ連邦憲法裁判所は2日、通信会社に電話、インターネットなどの通信記録の保存を義務付ける法令を違憲とする判断を下した。同法令はテロ対策の一環として導入されたEU指令に沿ったものだが、憲法裁は「重大なプライバシー侵害」と […]

ドイツ連邦憲法裁判所は2日、通信会社に電話、インターネットなどの通信記録の保存を義務付ける法令を違憲とする判断を下した。同法令はテロ対策の一環として導入されたEU指令に沿ったものだが、憲法裁は「重大なプライバシー侵害」と認定。政府は見直しを迫られることになった。これによりEU指令そのものが修正される可能性も出てきた。

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2006年に導入されたEU指令は、通信会社やインターネット接続業者などに対して、テロや組織犯罪の捜査に備えて、電話や携帯電話、Eメールの発信者、受信者、日時、通話時間などの記録を保管することを義務付ける内容。警察などは捜査の一環で情報を照会することができる。保管期間は6カ月~2年間の範囲内で、加盟国が個別に定める。これに基づきドイツは2008年、記録の6カ月保存を義務付けるルールを導入した。

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同ルールでは通話やメールの内容は保存対象となっていない。しかし、ナチスや旧東独時代に監視社会を経験し、こうした問題に敏感なドイツでは、市民団体などが人権侵害として反発。約3万4,000人が原告となって違憲訴訟を起こし、過去最大の集団訴訟に発展していた。

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憲法裁は判決で、通信記録の保管を義務付けること自体は基本的に違憲ではないとしながらも、記録流出を防ぐ措置が十分ではなく、当局による利用の制限が緩いと指摘。同法令は憲法で保障された通信の秘密の侵害に当たると認定し、政府にルール見直しを求めると同時に、現在保管されている記録の消去を命じた。

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トーマス・デメジエール内相は違憲判決に遺憾の意を示した上で、通信記録保管はテロ対策に不可欠として、憲法裁が指摘した問題点に対応するため早急に規定を改正する意向を表明した。捜査のため記録を入手する際に、案件ごとに裁判所の命令を必要とすることなどが改正点となるもようだ。

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問題の発端であるEU指令をめぐっては、法制化の過程で一部の加盟国がプライバシー保護の観点で難色を示した経緯がある。現在もスウェーデン、アイルランド、オーストリアなど6カ国が導入を見送っているなど加盟国の足並みは乱れている。今回の判決はEU指令を直接の標的としたものではないが、新たに発足した欧州委員会のレディング委員(司法担当)は、指令と人権の整合性を検証する方針を打ち出しており、これを契機にEUもルール見直しに動きそうな気配だ。

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