2010/3/15

産業・貿易

域内エネルギー市場、規制当局の連携やインフラ投資促進が課題

この記事の要約

欧州委員会は11日、エネルギー分野における域内市場創設に向けた取り組みの進捗状況をまとめた年次報告書(ベンチマークレポート)を公表した。報告書は域内の多くの国で電気・ガス市場の完全な開放を目的としたEUルールへの対応がな […]

欧州委員会は11日、エネルギー分野における域内市場創設に向けた取り組みの進捗状況をまとめた年次報告書(ベンチマークレポート)を公表した。報告書は域内の多くの国で電気・ガス市場の完全な開放を目的としたEUルールへの対応がなお不十分と警告。EUが昨年6月に採択した電気・ガス市場における新たな規制の枠組みを定めた「エネルギー市場に関する第3次規制パッケージ」に沿って、◇各国の規制当局による連携強化を通じた競争の促進◇再生可能エネルギーを中心とする供給源の多様化◇国境を越えた供給網の整備を柱とするインフラ投資の促進――などへの取り組みを強化する必要があると指摘している。

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欧州委は2003年に採択された電気・ガスの域内市場創設に関するEU指令に基づき、1年ごとに市場分析を行い、完全自由化に向けた取り組みの成果をまとめている。

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2009年のベンチマークレポートでは世界的な金融・経済危機が域内のエネルギー市場にもたらした影響について詳細に分析している。これによると、今回の危機で欧州エネルギー市場への投資が当初の予定を下回る一方、多くの企業が生産縮小を余議なくされた結果、電気・ガスの需要が落ち込み、とりわけガス料金が大幅に下落。価格面で域内市場における競争が促進された。ただし、国際市場における原油価格の下落に比べると、小口需要家向け電気・ガス料金の値下げ幅は小規模なものにとどまっている。

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一方、欧州委は各国の規制当局が市場開放プロセスにおいて消費者の権利により重点を置くようになった点を評価している。報告書はスマートメーターと呼ばれる最新の計測システムの導入がスタートした点に触れ、これによって消費者は正確に電気・ガスの消費量を把握することができ、結果的に市場の透明性やエネルギー効率の向上につながると分析している。このほかEU全体をカバーする次世代送電網(スマートグリッド)の構築に向け、加盟国が投資奨励策の整備などに乗り出した点や、域内の電力取引所による連携の動きなどを09年の主な進展として挙げている。

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