2010/3/15

環境・通信・その他

ポスト京都議定書「年内合意は困難」、欧州委が戦略文書で警告

この記事の要約

欧州委員会のヘデゴー委員(気候変動担当)は9日発表した地球温暖化対策に関する戦略文書で、京都議定書に代わる新たな国際的枠組みを年内に取りまとめるのは困難との見通しを明らかにした。ポスト京都議定書の早期採択に向けてEUが率 […]

欧州委員会のヘデゴー委員(気候変動担当)は9日発表した地球温暖化対策に関する戦略文書で、京都議定書に代わる新たな国際的枠組みを年内に取りまとめるのは困難との見通しを明らかにした。ポスト京都議定書の早期採択に向けてEUが率先して温室効果ガス排出削減などの取り組みを強化し、国際交渉で主導的な役割を果たす姿勢を打ち出す一方、主要排出国の間で依然として意見の隔たりが大きいと指摘。新たな議定書の採択は2011年にずれ込む可能性が高いとの見方を示している。

\

昨年末にコペンハーゲンで開かれた国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)では法的拘束力のある合意文書を採択することができず、13年以降の枠組み構築は今年末にメキシコで開かれるCOP16に先送りされた。ヘデゴー委員は「すべての主要排出国が行動を起こさない限り、気候変動を食い止めることはできない。(CO P16が開かれる)カンクンですべての合意が得られることを強く希望しているが、残念ながら主要排出国からは合意形成に向けたシグナルが出ていない」と指摘。ポスト京都議定書の年内採択は厳しいとの見方を示したうえで、「法的拘束力のある国際合意が11年に南アフリカで開催されるCOP17以降にずれ込むことがあってはならない」と警告した。

\

政策文書は欧州委が今月初めに発表した向こう10年間の新たな成長戦略「欧州 2020」に沿って、EUは「世界で最も環境にやさしい地域」になるため具体的な行動をとらなければならないと強調。温暖化対策を推進することが結果的にエネルギーの安全確保や雇用創出につながると指摘し、EUが掲げる20年までに温室効果ガス排出量を1990年比で20%削減するという公約について、削減目標を「30%」に引き上げた場合に必要となる新たな対策について分析を進めていることを明らかにした。

\

EUは米国をはじめとする他の先進国がEUと同等の取り組みを約束することを条件に、中期削減目標を30%に引き上げる方針を示している。ヘデゴー委員は同日、欧州議会で行った演説でこの点に言及。「削減目標を30%に引き上げることは簡単ではない」と述べ、域内産業の状態を見極めたうえで慎重に判断すべきだとの考えを示した。

\

欧州委はこのほか、COP15の「コペンハーゲン合意」に盛り込まれた先進国による途上国の温暖化対策支援について、特定のプロジェクトに対して直ちに資金提供を行う「ファストスタート」に着手することを提案している。EUは10-12年に年間24億ユーロをファストスタートの枠組みに提供する方針を打ち出している。

\