2010/3/29

産業・貿易

EUのエアバス支援は違法、WTOパネルが最終報告

この記事の要約

欧州の航空機大手エアバスと米ボーイングへの補助金をめぐり、米国とEUがそれぞれ世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、WTOの紛争処理小委員会(パネル)は23日、EUによるエアバスへの補助金を違法とする最終報告を双方 […]

欧州の航空機大手エアバスと米ボーイングへの補助金をめぐり、米国とEUがそれぞれ世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、WTOの紛争処理小委員会(パネル)は23日、EUによるエアバスへの補助金を違法とする最終報告を双方に示した。報告書は公表されていないが、EU加盟国による開発援助の一部が輸出補助金にあたると認定されたもよう。米政府によるボーイングへの支援については6月頃に最終報告が出る見通しで、アナリストらの間ではボーイング向けの補助金についても違法性が認定されるとの見方が有力だ。EU主要国はエアバスの次期旅客機「A350」の開発でも資金支援を行う方針を打ち出しているが、EU・米の双方は航空機メーカーに対する公的支援の枠組みについて抜本的な見直しを迫られそうだ。

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WTOを舞台とする過去最大規模の通商紛争で焦点となっているのは、両社の新たな主力旅客機「エアバスA380」と「ボーイング787(通称ドリームライナー)」の開発に関連した支援策。EU各国のエアバスに対する補助金が世界の航空機市場で著しく競争をゆがめてきたとする米側の主張に対し、EUはボーイングも公的支援を受けて開発した軍用機向けのテクノロジーを活用してドリームライナーの開発を進めており、これは米政府による間接的な補助金にあたると反論。双方は2004年10月、両社に対する資金支援は不当な補助金にあたるとして相次いでWTOに提訴した。

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AP通信などによると、パネル報告はエアバスに対する英国、フランス、ドイツ、スペイン政府の研究・開発支援などを違法な補助金と判断したもよう。ただし、EUの補助金がボーイングの業績に深刻な打撃を与え、米航空機業界で多数の失業者を出す結果を招いたとする米側の主張は退けられたとみられる。

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エアバスは声明で「最終報告は米国の主張のうち7割を却下した」としながらも、報告書の内容を精査するとして、上級委員会への上訴を含めて対応を検討する方針を示した。これに対し、欧州委員会のデフフト委員(通商担当)は26日、米政府との交渉による解決を図りたいとの考えを示した。ブリュッセルで米通商代表部(USTR)のカーク代表と会談した同委員は記者団に対し、EUは米国との間で「良好なビジネス環境」を整えたいと考えており、「相互の報復」は望んでいないと発言。話し合いによって航空機メーカーへの補助金問題を解決したい考えを強調した。

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