2010/4/12

産業・貿易

欧州委が銀行課税制度の導入検討、救済支援の財源に

この記事の要約

欧州委員会は6日、EU域内の銀行が破綻の危機に陥った場合に備え、銀行に課税する制度の導入について分析した報告書を公表した。金融安定化に向けた具体策の1つとして検討を進めているもので、欧州委はバランスシートに課税するシステ […]

欧州委員会は6日、EU域内の銀行が破綻の危機に陥った場合に備え、銀行に課税する制度の導入について分析した報告書を公表した。金融安定化に向けた具体策の1つとして検討を進めているもので、欧州委はバランスシートに課税するシステムを導入した場合の税収がEU全体で年間に最大500億ユーロに達すると予測している。今月16-17日にマドリードで開くEU財務相・中央銀行総裁会議で協議する。

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EUは金融危機の再発防止に向けてさまざまな規制の導入を検討しており、その中で銀行税の導入構想が浮上してきた。経営難に陥った銀行に対する救済支援のコストを納税者ではなく、銀行自身に負担させるのが狙いで、欧州委は銀行課税制度を「革新的な資金調達の選択肢の1つ」と位置づけている。欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は「金融セクターは金融安定化に向けてコストを負担する必要がある」と指摘。銀行に対する課税システムが「欧州における危機管理の枠組み構築で重要な要素になる」との認識を示した。

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将来のリスクに備えて銀行のバランスシートに課税するシステムはすでにスウェーデンで導入されており、米国でも一定の資産規模を持つ金融機関の負債に一律0.15%を課税する制度の導入が検討されている。さらにドイツでは経営規模やリスクの度合いに応じて救済基金への拠出を義務づける銀行課税法案が審議されており、フランスもこれと同様の制度の導入を検討している。

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報告書は銀行課税制度について「金融機関の好ましくないふるまいを制限しながら加盟国政府は妥当な運営費用で相当額の税収を得ることができる」と説明。税率をスウェーデンと同じ0.036%に設定した場合の税収はEU全体で年間130億ユーロに上り、オバマ大統領が提案している金融危機責任税と同じ0.15%では年間570億ユーロに膨らむと試算している。一方、投機目的の短期的な為替取引を抑制するための外国為替取引に対する低率の課税制度(いわゆるトービン税)を導入した場合、欧州だけで年間200億ユーロ、世界全体では500億ユーロの税収が見込めるとしている。

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銀行課税制度のコンセプトは6月にカナダで開催される20カ国・地域(G20)首脳会合で議題に取り上げられる可能性が高い。欧州委のトレス報道官は記者団に対し、「課税構想は欧州レベルで共通の指針を策定し、アイデアと立場を共有するためのものだ」と説明。G20での協議に向けてEU内で足並みを揃えたい考えを示した。

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